第三十話 Oh,My Absinthe!! ページ32
狭い空間を蛇の様に肢体を駆使し、社長室の通気口へ着く。
何度も通ったせいで自然と着いてしまい気づかなかったが――
辺りが、暗い。
何時もならば、通気口から光が入り導いてくれたのだが。
そこで、僅かにその“暗さ”が揺れたことに気付いた。
布が擦れる音がした辺り、カーテンを掛けているのだろう。
どうしたってそんなことを……。
考えても仕方がない。
そっと枠を外し、カーテンの割れ目に指を掛け様子を窺――
「やぁ、待っていたよ」
薄暗く、けれどどこか楽しそうな声色が聞こえるや刹那。
僅かに見えた黒い蓬髪。 どす黒い沼の様な眼が私を捉える。
「……は」
思わず漏れた声なんか気にしない、
とでも言わんばかりに掛けた指を引っ張られ、ずるりと通気口から出される。
そのまま体勢を崩したまま社長室の床に背中から落ち、鈍い痛みが走る。
キッ、と振り向くと砂色のトレンチコートが目に入った。
否、それよりも、この人は――
「………………太宰、様?」
長いコートに身を包む彼は間違いなくポート・マフィア歴代最年少幹部。
太宰治その人だった。
彼とは少しだけ縁がある。
ふらりと姿を消したと思ったら、そうか。
「貴方も、首領を裏切ったのですね……」
ふぅ、とため息を吐く。
「……私のことを気にかけてくれるのは嬉しいのだけれど。
社長の首は? いいのかい?」
はッと気づき、いつも福沢諭吉が座っている席に目を移す。
――が、そこには誰もいなかった。
(アブセンス)
290人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
蒼(プロフ) - 1でお願いします! 更新頑張ってください!!続き楽しみにしてます!! (2018年4月8日 21時) (レス) id: 7443137317 (このIDを非表示/違反報告)
臣民(プロフ) - みぃさん» 原作第五十話に続くような形で書かせて頂きました。二三回読める話をモットーとしておりますので、深く考えていただけたら嬉しい限りです。更新頑張ります! (2018年4月7日 11時) (レス) id: d39d595e1e (このIDを非表示/違反報告)
みぃ(プロフ) - 最後ので涙がブワッと…エリスちゃぁぁああん!! 更新楽しみにしています! (2018年4月5日 16時) (レス) id: d62fbb3902 (このIDを非表示/違反報告)
臣民(プロフ) - **楼椛**さん» いえいえ!応援有難う御座います。たっぷりお楽しみください! (2018年3月26日 20時) (レス) id: d39d595e1e (このIDを非表示/違反報告)
**楼椛** - 初コメ失礼します!今日初めて拝見させていただいたのですが、とても面白いです(ありきたりな言葉ですみません) 更新頑張ってください!これからも森さんを楽しみにしてます!←← (2018年3月26日 19時) (レス) id: e7e0abd8b6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:臣民 | 作成日時:2017年10月22日 9時