【文スト】首領、１３歳になります。【森鴎外】

第二十八話　言葉の綾 ページ30

「リンタロウ……死ぬの？」


芥川君が放った書類を代わりに熟している時に云われた。
彼は紙と向かい合うより敵と向かい合う方が最適で――


「………………え？」
「死ぬの？」


聞き間違いではなかった。


「死なないけど……どうしてそんなことを？」
「“リンタロウが死ぬとしたらどんな時だろうと思って”」


いつも物騒だ、この子は。


「でも、どうしてそれが死ぬことに繋がるのかね？」
「あたし、考えたの。
　例えば、部下に裏切られたりすれば流石にリンタロウも死ぬって」
「裏切り、ねぇ……」


部下との間になるべく壁を作らないようにはしているが……
それを好機と捉えられ狙われては元も子もない。


「それで、分かったの。 “葬れる”のは誰か」
「…………」


じっと次の言葉を待つ。
心なしか、期待している。

――真逆、中也君？
――嗚呼、紅葉君かもしれない。
――将又、芥川君か。


「“福沢殿”よ」


その言葉を聞いて肩を落とす。
予想内の答だったのだから。


「あのヒトしか、ありえない」
「それで？ 近々、私は殺されて死ぬのかい？」
「“勝負に勝てなくって死ぬ未来”が視えた」


エリスちゃんが髪を弄り始める。


「そうだねえ……“勝てない”かもしれない。
　でも、きっと“負けもしない”よ」
「イーヴンってこと？」


その質問に軽く肯定して天を仰ぐ。
同じ方向を、Aちゃんも向いてくれていると嬉しい。


――それに、死ぬのは私では無く、“君”なんだろう？


　


――エリスちゃん。


　


(リンタロウ……あたし、死ぬの？)

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