ささえあい。 (ページ49)

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ドライヤーを持ってマサさんの所に行くと、ソファに座ってと指示された。されるがまま私はソファに座り、ドライヤーはいつの間にかマサさんの手に渡っていた。顔の火照りも手の熱さも、みんなみんなマサさんのせい。

『…マサさん？』

ドキドキしながら背中を向けてどうにか火照りを落ち着けようと一人奮闘するけど、いつまでもドライヤーの音が聞こえてこない事に違和感を覚えた。振り返ると、それを握り締めたままのマサさんが立っていた。

「…昴さんにもしてもらってたんだ」

『え…』

それからマサさんは黙ってしまった。確かに、昴くんに乾かしてもらったりはしていた事もある。けど、それってマサさんに言わなきゃいけない事なのかなって思ってしまった。それは…2人だけの思い出にしておきたい。言う必要は、無いと思う。

『……マサさんは、マサさんのままでいいよ』

だから、私がマサさんに言えるのはこれだけ。マサさんが何を思ってそう言ったのかは定かではないけど、これでもよく考えて出た答えだ。

『確かに、昴くんは凄い選手だし、昴くんと出会えて本当に良かったって思ってる。けど、マサさんにも良い所はあるし、張り合う必要は無いんじゃないかな』

こんな事、後ろにマサさんが居るから言える事だ。目を合わせてなんて絶対言えない。ほら、またドキドキして来た。

『は、早く乾かして寝なくちゃ！明日も練習だよ』

「…うん」

選手として昴くんを意識して、追い抜こうとする姿勢は分かる。でもマサさんが言った事は多分、そういう意味じゃない。

マサさんは、マサさんのままでいいよ。

それは私にも言い換えられる。まるで自分にも言い聞かせてるみたいだった。自分の気持ちに正直に。正直に…

『……分かんないよ』

その声はドライヤーに掻き消された。