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35 石川side ページ37

ああくそ…

どうしても間に入れないのは分かってるのに、本当どうしてこんな優しい事してくれるんだよ。マサさんも寺島さんも互いに向け合う笑顔は特別で、「付き合ってるの?」と勘違いされてもおかしくない。

確かにお似合いだけど…

俺も隣に立ちたいんだよ。



『昴くん!!!』



あの声は忘れない。
2年前、W杯で昴さんが倒れたあの時、どよめきと嫌な静けさの中にその声があった。俺は聴き逃さなかった。
寺島さんにもマサさんにも知らぬ存ぜぬを貫いてるけど、俺、2人に何があったか大体知ってるから。
それでも、俺は寺島さんの笑顔が好きだし、マサさんにだけ向けてるその笑顔を独り占めしたいって思うし、昴さんを超える人間になりたいって思うし。

「待って」

引き止めた腕は予想以上に白くて細かった。抱き締めればきっと、もっと細いんだろうな…そんな身体で俺達の愚痴や不満や意見を全部受け止めてるのか…

ああ、くそ…

本当…何で止まんねえんだよ…

「…一緒にイタリアに来て」


やっぱり寺島さんが好きだ


マサさんを応援するって決めたらこの気持ちに歯止めがきくんじゃないかって思ってたけど、そうじゃなかった。寧ろ、どんどん加速していった。その結果がコレだ。

「迷惑だよね、ごめん…でも、本気だから」

『…!』

「Aちゃんを支えてあげたいし、俺も支えてもらいたいし」

こういう時に名前で呼ぶとかずるいなあ俺…
一個上だけど、さん付けっていうよりちゃん付けの方がしっくりくるんだよね。

「俺…Aちゃんが好き」

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作者名:しおん | 作成日時:2019年10月26日 6時

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