ささえあい。 (ページ15)

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昴くんとバレーをするのは決まってこの公園だったのは、あまり利用されていないからだった。主にご年配のお散歩コースなので、目撃情報は奇跡的にSNSに上がらなかった。

「こんな穴場あったんだ」

『凄いでしょ』

昴くんが買ってくれたボールを鞄から出して準備をする。よくハンドリングを披露してくれたりここで簡単なパス練習をしたものだ。ボールを地面に落としてもその場で拭けばまあまあ何とかなるって…あれ、もしかして汚れる系ってマサさんは駄目だった！？無配慮過ぎた！？

『も、もしかして…外でやるの駄目な人？』

「そんな事ないよ。昴さんとよく来てたの？」

その答えにホッと胸を撫で下ろし、「うん」と答えると「そっか」と簡単な答えが返ってきた。
たとえ関西でも冬の15時を舐めてはいけない、寒いものは寒い。外でやる事になったのは体育館の予約が取れなかったから。

『…まあ、冬は初めてだけど』

「だよね」

『本当、2、3本とかで満足するから！』

「少なっ」

『だって寒いし…私のわがままでしてるから…』

「全然いいよ。ス○バで奢ってくれればいいから」

『えっ！？』

それでもちゃんとマサさんは付き合ってくれる優しい人。最近、マサさんがお兄ちゃん的存在になってる気がするのは気のせいではない。昴くんを失ってから何かと気を遣って連絡をくれて、呼び方も敬語も変わっていった。
そして近くのベンチに上着を置いて軽く準備運動をする姿も私服だから一般人と然程変わらない。

『変な所に飛んだらごめんね』

「そんなにノーコンなの？」

『ち、違うけど！』

最初の頃の人見知り全開のマサさんは一体何処に行ってしまったんだ。あ、人見知りは私も同じだったか…
いくよ、と緊張気味にスタートさせると、ボールは弧を描いて上手くマサさんの所に行ってくれた。

「お、上手いじゃん！」

いとも簡単に返してくるボールは流石、日本代表。

『あ！』

私が悪球になってもマサさんは綺麗な山なりのボールにして返してくる。本当、凄いなあ。最初は緊張と寒さでガチガチだったけど、慣れると徐々に表情も弛んでいって少し会話も出来るようになった。

『スパイク、打ってみたい』

「マジで」

冗談だろとでも言うような声と共にボールがやって来る。当初の2、3球宣言は何処へやら。
実際に軽くスパイクを打ったボールはちゃんとマサさんに返球出来て「凄いじゃん！」と今日一番の笑顔を見せてくれた。
ボールは無事、地面の冷たさを帯びる事はなかった。