ささえあい。 (ページ12)

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あれから私は少しづつ笑えるようになっていった。確かにあのコートの中に昴くんは居なかった。もしかしたらという謎の一縷の望みが潰えたからか、単純に吹っ切れたからか…よく分からないけど、マスクを外して大学に行けるようになった。

バレーは大好きだけど、大嫌い。

矛盾しているけれど、本当にそうで。昴くんの愛したバレーは大好きだ。けれど、そこにやっぱり昴くんを求めているところがあるからこそ大嫌い。そう考えると、柳田さんのサーブは昴くんに似ているから申し訳ないけど嫌いの部類に入る。だから試合や練習は観に行かなくなった。でも、前にも言ったようにご飯は一緒に食べたりする。流石にお互いの家でとはいかないけれど、試合を観てからは次第に食事に色と味が戻ってきた。

『で、自家製梅酒はどうなんですか？』

貴重なオフの日にご飯に行った。お店はいつもの昴くんと三人で来ていた馴染みのお店。柳田さんが梅酒ロックに口をつけた時、話を切り出した。お酒の中でも梅酒が大好物で自分でも漬けていると聞いた事があってそれを思い出した。好きな物の話だから嬉嬉として話してくれると思っていた私だったけど、柳田さんは少し困ったような顔をしていた。

「あー…いい加減敬語やめない？」

『…え』

「いや、俺、普通に歳下にタメ口で喋ってくる奴居るし、やっぱ敬語って他人行儀だなって」

『あ…はい』

慣れるのにかかりそうだなあ…とか思いつつも話を進める。緊張気味に改めて当初の質問を投げかけると、その様子を面白そうに少し笑って答えてくれた。笑わなくてもいいじゃない！

「まだまだ漬け始めたばかりだから飲めないね」

『結構時間かかるん、だね』

「ふふ、まあね」

『だから笑わなくてもいいじゃないですか！直ぐに慣れるものじゃないの！』

今もかなり意識して喋ってるんだから！それでも私達は今までの中で一番笑っていた。そう、お酒を囲んで話をする時はこうやって笑顔でいるのが一番なのだ。昴くんが居た時もずっとこんな笑顔だった。ひとしきり笑って落ち着くと、改めて自分のドリンクに口をつけた。