Love T-Rain【Kaz・N 0617BD/2014】 (ページ11)

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11両目ページ11

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「Aちゃん、電車変えたの？」

「…混んでる電車に乗りたく…なく…て…」

小さな声でウソをつく

きっと私のウソなんて二宮さんはお見通しだろう。

「そっか、あれツライもんな」

でも大人な二宮さんはそのウソに気づかないフリをしてくれる。

「でも、バス無いんじゃないの？」

「あっ、だから今は自転車です」

そう言って駐輪場を指さす

ちょっと眉間にしわを寄せて

「こんな遅くに自転車で家まで帰るの？」

こくんと頷く

二宮さんは少し困ったような怒ったような表情をしたように見えた。

でもそれは一瞬で

「あのさ、これ」

そう言ってスーツの内ポケットから出したのは掌くらいの白い封筒

梅のマークの下には赤い文字で

「・・太宰府天満宮？・・・これって・・」

掌に乗せられたそれを両の掌でつつむ

「ん、出張のお土産。覚えてたらなって約束してただろ」

優しい、優しい茶色の瞳が笑ってる

私は嬉しいのとびっくりしたのとで何も言えなくって

ただただそれをぎゅっと握りしめた。

「受験頑張れな」

んじゃあなって二宮さんが頭をぽんぽんっと撫でてくれる。

そんなことされたこと無くて

心臓がぎゅっとする

嬉しいのに、

こんなところまで来てくれたのが嬉しいのに

私は何にも言えなくって

ただ改札口を通る大好きな後ろ姿を見つめることしかできなかった。

その後ろ姿に

「好きです」って言って泣くことしかできなかった。

どうやって帰ってきたのかわかんないくらい急いで家に帰って

部屋に入ってそっと白い袋からそれを取り出す

白い裂地に梅の花の刺繍されたお守り

ぎゅっと握りしめる

お守りの入っていた封筒は少し角が丸まっていて

もしかしてずっと持ち歩いていてくれてたのかななんて期待してしまう。

ぽろぽろ頬を伝う涙

嬉しくて涙が出るのか

女の人と一緒にいたのに私にこんなことできる大人な二宮さんに哀しくて涙が出るのか

どちらなのか、なんなのか良くわからない

でも手の中にあるお守りは

それを買う時は私の事を考えててくれたというシルシのように思えた。

お守りをいつも持ち歩くポーチに大事にしまった

お守りの入っていた封筒も捨てられるわけもなく手帳のカバーに挟みこんだ。

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