僕らのヌナは、今夜も僕らの夢を見る[SVT]

#バノニ検査 ページ29

＿＿＿＿バーノンside



「バノ、お前いけ」
「…うん」
「バノに反応を示さなかったら…壊れてる証拠だ」


ドギョミヒョンが余命宣告をする医者の目をしながら見つめる先には
揺れ動く後部座席で背筋を伸ばして美しい所作でタマネギを食べ続けるヌナ。

今日の朝からヌナは一度も奇声を発してないし
常日頃の変態発言をしていない。異常だ。


「ヌーナ！何食べてるんですか？」


だいぶ前にテレビ番組で”オッパや”をやらされた記憶が蘇りそうなのをこらえる。


「タマネギ。
ヌナね血をサラサラにしないといけないの。
バノ、危ないからちゃんとシートベルトしよっか」

何だこのフツーの返答は。
これをフツーと捉えるあたりがもうバグなのは誰も指摘しない。

ま、負けないぞ。

「それじゃあ僕が食べさせてあげますよ。
ヌナにあーんしても良いですか」

こみ上げてくる吐き気が自分のせいなのが情けない。

「ううん、いいの。タマネギさんを１グラムたりとも失いたくないから自分で食べたいな」


負けた…完敗した…。

僕を送り出したドギョミヒョンを始めメンバーの乾いた拍手が虚しく車に響く。


「変わって」

そういったのはハニヒョンで目には闘志が燃えていた。
頼みましたよ、って意味を込めて握手を交わして席を変わる。


「や、Aや。
緊張してるの？大丈夫だよ。
ね、それよりみて。このTシャツAが選んでくれたやつ。
これ今日ジャージの下に着てるんだ」

何で私なんかの選んだ服で公共の電波に写ろうとするんですか？！
スタイリストさんが選んだやつを！！

…って声が聞こえたのは僕の脳内だけで
ヌナは聖母の微笑みをハニヒョンに送るだけだった。


「酒持ってきて〜、ついに口も聞いてもらえなくなったわ」


ハニヒョンの言葉に耳を貸す者はいなかった。

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