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どうしよう……
周りを見回しても、倒れている人しかいない。
……とりあえず、キッドがよく行く屋上へ行ってみよう。
外の空気も吸いたいし。
部屋を出た私は、屋上へと続く階段を駆け上がった。
.
扉を開けると、ひんやりとした風邪が頬を掠める。
春でもやっぱり、夜は寒いみたい。
そのとき、ヒュォォォと一際強くて冷たい風が吹いた。
その冷たさに驚いて顔を上げると、そこには──────……
ひらひらとマントをたなびかせ、月にブラックダイヤモンドをかざす彼────怪盗キッドがいた。
「……こんばんは、お嬢さん」
こちらに気付いたらしい彼は、私を見て少し驚いた表情で言った。
「……こんばんは」
そういえば、中森警部はどうしたんだろう…
あの後キッドを追いかけていったのだろうけれど、その姿はどこにも見当たらない。
途中でキッドに眠らされたのだろうか。
「お嬢さん……とても綺麗な瞳と髪をお持ちですね」
キッドは私を見つめながらそう言った。
「ありがとう……でも、貴方のその澄んだ瞳の方が綺麗」
─────……そう、黒羽くんのような。
キッドの顔はモノクルとシルクハットで隠れているけれど、その雰囲気は黒羽くんにとても似ている。
「……ありがとうございます」
暫くの間、私達は言葉を交わすことも無く、じっと見つめ合った。
それはとても穏やかな時間で、永遠に続けばいいと思うほどだった。
そのとき。
背後からバァンと扉の開く大きな音。
驚いて振り返ると、そこには息を切らせた中森警部。
「怪盗キッド……!」
中森警部の叫びは気にすることもなく、キッドは私に向かってブラックダイヤモンドを投げた。
「この宝石は目当てのモノではなかったのでお返しします」
落とさないようにしっかりと受け取ったダイヤモンド。
それは、月の光を反射してとても綺麗に輝いていた。
「それでは………またお会いしましょう」
そう言って中森警部の制止に構うことなく、たくさんの星が輝く夜空へ飛び立っていった。
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華美 - 木実こむぎ@Project KZ副隊長さん» 初期の頃からですか!ありがとうございます嬉しいです!これからも頑張ります〜 (2019年6月21日 19時) (レス) id: 06514a18af (このIDを非表示/違反報告)
木実こむぎ@Project KZ副隊長(プロフ) - うわぁぁあ( ;∀;)終わってしまった、、、初期の頃から読ませていただいてました!番外編待ってます!( ´ ▽ ` )ノこれからも頑張ってください! (2019年6月21日 18時) (レス) id: 7f9bbdec25 (このIDを非表示/違反報告)
華美 - 雨上がりのcrewさん» わわ、ありがとうございます!これからもよろしくお願いします! (2019年6月19日 10時) (レス) id: 06514a18af (このIDを非表示/違反報告)
雨上がりのcrew(プロフ) - すごい。。。この作品私得←これからも更新頑張ってください!! (2019年6月16日 15時) (レス) id: 11f12a305b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:華美 | 作成日時:2019年5月7日 21時