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トイレに暫く居座ろうと思っていたのだけれど、初めて来た青子ちゃん家の間取りは勿論分からない訳で。
「トイレの場所聞くんだった……」
ため息をひとつついてから、廊下を戻って二人のいる部屋へ向かう。
ドアノブに手を掛け、扉を押したその時──────
───────……見てしまったのだ。
その瞬間を。
「青子、快斗のことが好き……」
青子ちゃんが頬を染めながら、想いを伝える瞬間を───────……
.
いつの間にか、部屋を飛び出していた。
玄関で青子ちゃんのお父さんに声を掛けられたけれど、そんなの気にする暇もなく走り続けた。
とにかく、あの場所からすぐにでも逃げ出したかった。
.
『好き』
その言葉を聞いた途端、これ以上無いくらい胸が締め付けられて。
……青子ちゃんが告白した今、きっと二人は付き合うことになるだろう。
そう思うと、なぜだか涙が溢れて止まらない。
「それはきっと、恋でしょう」
突然聞こえてきたその言葉に、ハッと息を呑んだ。
私の足はいつの間にか商店街に辿り着いていて、目の前には電気屋さんの大型テレビ。
"恋"
その気持ちは、私の黒羽くんに対する気持ちを表すにはピッタリな言葉で。
そうか、これは恋だったのか………
なんだか自分が情けなく思えてきて、テレビの画面を見つめながら自嘲した。
……失恋、したのか。
初めての恋は、呆気なく終わってしまった。
初恋は実らないとよく言うけれど、それはどうやら本当のことらしい。
頬に冷たい雫が何滴も流れ落ちる。
いつの間にか暗くなっていた夜空を見上げて、必死に雫が流れないよう努めた。
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華美 - 木実こむぎ@Project KZ副隊長さん» 初期の頃からですか!ありがとうございます嬉しいです!これからも頑張ります〜 (2019年6月21日 19時) (レス) id: 06514a18af (このIDを非表示/違反報告)
木実こむぎ@Project KZ副隊長(プロフ) - うわぁぁあ( ;∀;)終わってしまった、、、初期の頃から読ませていただいてました!番外編待ってます!( ´ ▽ ` )ノこれからも頑張ってください! (2019年6月21日 18時) (レス) id: 7f9bbdec25 (このIDを非表示/違反報告)
華美 - 雨上がりのcrewさん» わわ、ありがとうございます!これからもよろしくお願いします! (2019年6月19日 10時) (レス) id: 06514a18af (このIDを非表示/違反報告)
雨上がりのcrew(プロフ) - すごい。。。この作品私得←これからも更新頑張ってください!! (2019年6月16日 15時) (レス) id: 11f12a305b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:華美 | 作成日時:2019年5月7日 21時