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昔話 ページ44

つーっと冷や汗が伝うのを感じるが、それを拭うこともできない。

光藤さんに"わざと"重要なことを教えなかったことは、事実だ。

もちろん、これには理由がある。それもかなり自己的な。
けれど、彼が察しているように、例え結果的にそうなったとしても、決して彼を嵌めるために教えなかったわけではなかった。
それでも、自分が最低なことをしているという自覚はあった。

先程光藤さんが本当は詮索するつもりはなかった、言っていた通り、彼は私への違和感を抱いても、きっと「個人のことだから」と詮索することを控えていたのだろう。
けれど、"縁"という重要なシステムをわざと教えられていなかったことに気づいてしまった。
だから、彼は"自分たちに害を与える可能性がある人物"として私を見ているのだと予測できる。

本当は、彼に、私の身勝手な事情を話す気などなかった。
けれど、今この場で私が選べる選択肢は、一つしかないのだ。

「 ──確かに、私は、あなたにわざと教えなかった。それについては、申し訳なかったと思っています。……けれど、貴方を陥れるのが、貴方達に害を加えることが、目的ではありません 」

それを聞くと、光藤さんは「あー……」と頭を軽く搔く。

「 まあ、なんとなくそうだとは思ったよ。僕を陥れる事が目的なら、もっと僕の生死や尊厳に直接関わる事を教えないか、嘘を教えられてたと思うからね。……だから、君の目的がわからない 」

この人は賢く、そして冷静だ。この場で、私を巫山戯るなと罵倒したって可笑しくないのに。寧ろ、そうしてくれた方が、私だって気が楽なのに。
それでも、ちゃんと訳を聞こうとしてくれている。

「 ……少し、昔話をしてもよろしいですか 」

「 ……昔話? 」

「 はい。愚かな、私の話です 」

光藤さんは急にそんな話を持ち出されて、少しだけ怪訝な顔を見せたが、彼は賢い人だ。その話は、私の身勝手な事情を知る上で欠かせないものだという考えにすぐ辿り着いたのか、またこちらに視線を向けてきた。

「 ……───分かった、聞くよ 」

その答えを聞いて話し出した私の昔話に、彼はただただ驚いていた。

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黒谷神奈(プロフ) - ぷかぷか桃李にゃんこ二号さん» コメントありがとうございます!拙い文ですが更新頑張ります! (2018年12月7日 19時) (レス) id: 39afa4525c (このIDを非表示/違反報告)
ぷかぷか桃李にゃんこ二号(プロフ) - ふふふ、この小説最高ですね!無理しない程度に更新頑張ってください! (2018年11月25日 19時) (レス) id: d641c5035a (このIDを非表示/違反報告)
黒谷神奈(プロフ) - Knightsを護る騎士でいたかったさん» コメントありがとうございます…!亀更新になりつつありますが更新頑張りますね! (2018年2月15日 18時) (レス) id: ba7d94baed (このIDを非表示/違反報告)
Knightsを護る騎士でいたかった(プロフ) - 面白いです!更新待ってます!! (2018年2月7日 17時) (レス) id: 7e00625b4b (このIDを非表示/違反報告)
黒谷神奈(プロフ) - 篠屋裕季さん» コメントありがとうございます!男の娘が大好物で花丸二期の感想に同意できちゃうあなたは私と完全和睦Sですおめでとうございます((黙 (2018年1月24日 17時) (レス) id: ba7d94baed (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:黒谷神奈 | 作成日時:2017年12月29日 9時

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