男の娘審神者の受難。【其ノ二】 (ページ16)

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第38話ページ16

まだここに来て何日も経ってないのに、相当な迷惑をかけてしまったようで、本当に申し訳ない気持ちになった。
そりゃまあ多少疲れが残っているのは自覚していたし、結果的に思ってた以上に気を張ってたみたいだったけど、気を張ってる自覚もまああった。
が、だからといってこれはないだろう。そう思って、謝罪の言葉を口にする。

「何か、ほんとごめん。ここまで運ぶのも大変だったでしょ」

「別に気にしなくていいよ。後みーくんを運んだのは僕じゃない」

「え、じゃあ誰が──」

僕がそう言いかけた時、部屋の扉がガラッと開いた。
そこに立っていたのは、赤いジャージを着用し、襤褸布を纏った山姥切。その手には、木でできた桶を持っていて、中からは湯気がゆらゆらとたっている。

「髭切、湯を──……。……起きていたのか」

起きている僕に目を向け、大して表情を変えることなく、ぽつりとそう告げる山姥切。

「ありがとね。今起きたところだよ」

「そうか。大事無いのか？」

「あ、そういやそれ聞いてなかったね。みーくん、体調悪かったりはしない？大丈夫？」

「え、うん。別にそれはないけど……」

「そっか、なら良かった」

寝過ぎたお陰か多少の倦怠感はあるものの、体調の悪さは感じない。
のだが、如何せん状況が掴めない。髭切はともかく、僕は山姥切には良く思われて無いのでは無かったか。
それを覆すような行いをした覚えは特にない為、余計に理解が追いつかない。いや、良く思われるのはいい事だし、自身を案じてくれるのはもちろん嬉しいのだけど。

「あ、それからみーくんを運んだのは僕じゃ無くて、……ええと」

「山姥切国広だ。いい加減覚えろ」

「あはは、ごめんごめん。山姥切くんが運んでくれたんだよ」

ごめんと言いながらも全く反省はして無さそうな髭切を、山姥切はじとーっと見やっていたがそれすらも髭切は気にしていないようにのほほんと笑っていた。
取り敢えず、僕は山姥切にお礼を言うべく、目を向けた。

「そっか……。ごめん、迷惑かけて。重かったでしょ」

「……別に重くはなかった。寧ろあんたはもっと食べた方がいい」

「あ、そう……？」

なんと言うか、昨日、いや、一昨日会った時に向けられた冷たい視線が嘘のようだ。
何故、こんなに気を許してくれてるのだろう。……いや、でも取り敢えず。

「ええと、僕が倒れた後、何があったのか教えてくれない？」