第130話 ページ33
「こうでもしないと、生活は厳しくて...Aさんを苦しめる為に私は利用されてるんです」
[そうだったのか...]
「はい。いきなり恋仲になれと言われても、難しくて...それに、三日月さんにはその気がないのは分かっていました」
[何故だ?]
「三日月さんは、いつ見ても心の隙間にぽっかりと穴が空いているように見えるんです。それは私と一緒に居ても満たされることはない。きっと、記憶はなくてもAさんのことをまだ想っているんだと思います」
[....]
「これからも恋仲の"フリ"は続けていきます。私は両親の為に、三日月さんは心の隙間を埋める為に一緒に居る。それだけの関係なんです」
[話してくれてありがとう。苦しかっただろう?]
「優しくしないで下さい。私はAさんを傷付けてるんですよ?今回のWデートだって、私と三日月さんの仲を見せびらかして、Aさんの気持ちを掻き乱す為にすぎない」
[先程言っていた"指令"というやつか]
「はい」
[悪いのは全部、あの審神者だ]
「ところで、早くAさんの元へ向かった方が良いのでは?もし、三日月さんと一緒に居るのなら尚更」
[あぁ。そうだな]
三日月さんと、他愛もない話をしているといつの間にか時間が経っていた
『三日月さん、そろそろ__』
「名残惜しいな...」
『え?』
「いや、ただの戯言だ」
『そ、そうですか』
名残惜しい。それって...
私とまだ一緒に居たいってこと?
「そうだ。"お主"では距離が近く感じる。Aと呼んでも良いか?」
名前ぐらいなら良いか
『はい。良いですよ』
「では、行こう。A」
差し出され手に触れようとしたその時
[A!]
『む、宗近さん!?』
人混みの中を掻き分け、宗近さんとかすみさんがやって来た
[心配したぞ]
『す、すみません』
[...三日月宗近と一緒だったのか]
『お互い、はぐれてしまって...別行動するより一緒に居た方が都合が良いですし』
[そうか。世話をかけたな]
「なに、気にすることない。Aとの会話、楽しかったぞ」
[...っ!はは、Aか...]
『あの、宗近さん?』
[花火が始まる。行こう]
『は、はい!』
私の手を引いていく宗近さんに、私はただ付いていくことしか出来なかった
「....」
「三日月さん、急に居なくなったから驚きましたよ」
「あぁ、すまんな」
「私達も急ぎましょう」
「そうだな」
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作者名:ゆきんこ | 作成日時:2021年1月3日 9時