第128話 ページ31
ベンチに座ると、三日月さんは買ったばかりのチョコバナナを食べだした
相変わらず、マイペースだな...
横目で見ていると、三日月さんと目が合った
目を逸らすと、何故か三日月さんが私にチョコバナナを差し出してきた
『あの、なんですか？』
「美味いぞ。お主もどうだ？」
『それは三日月さんが買ったものです。三日月さんが食べて下さい』
「美味いものは2人で食べると、さらに美味くなるものだ。さぁ、口を開けろ」
『け、結構です！』
「まぁ、そう言うな。美味いぞ」
この目...
きっと私が食べるまで、このやりとりは終わらないだろうな
『じゃあ、1口だけ...』
「どうだ？」
『美味しいです』
って！
これって、よく考えたら...
『間接キス！？』
「ん？あぁ、俺が勧めたのだ。お主は気にすることない」
気にするなと言われても...
宗近さんには絶対言えない
「ちょこが付いているぞ」
『え？どこですか？』
「俺が取ってやろう」
『...っ！』
口元に三日月さんの指が触れた
自分でも分かる。今、顔が赤いこと
「うむ。取れたぞ」
『あ、ありがとうございます』
これ以上、三日月さんと2人で居ると宗近さんも良い気はしないだろう
食べ終えたし、早く宗近さんのところに戻ろう
『あの、三日月さん、そろそろ＿＿』
「しばし、俺と付き合ってはくれぬか？」
『で、でも、宗近さんが探してるだろうし、かすみさんだって...』
「足」
『え？』
「痛むのだろう？」
『どうして...』
気付かれないようにしてたはずなのに...
「花火まで時間がある。もう少し休憩をしよう」
確かに足は普段とは違う下駄を履いているせいで痛むし、人混みで少し疲れていた
『じゃあ、少しだけ...』
少しだけならいいよね？
「俺の話を聞いてはくれぬか？」
『話？なんですか？』
「...俺は、記憶の一部が曖昧だ」
『そ、そうなんですか』
その記憶の一部は私のことなんだろうな
「俺は大事なことを忘れている気がする。皆と本丸で楽しく生活しているが、俺には心の隙間がある」
『かすみさんが居るじゃないですか。お似合いですよ』
「...かすみとは、恋仲ではない」
『え？』
「俺はかすみの近侍だ。だが、かすみの考えは分からん。何か悩みを抱えているようだ。話してはくれんがな」
三日月さんと、かすみさんが恋仲じゃない？
待って。頭が追い付かない
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作者名：ゆきんこ | 作成日時：2021年1月3日 9時
