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ページ38

「あ、Aさん」


 
約束の時間より10分前に着いたはずなのに、もうトウマさんは席に着いていて


彼のもとまですみませんっと足を速めた



 

「Aさんにまた会えるの楽しみにしてました」


『そんなっ……』


「もう体調は大丈夫ですか?」


『はいっ、ご迷惑お掛けして申し訳ございませんでした』



頭を下げると
いいですよっお元気そうで良かったです
と初めての時と同じように優しく笑ってくれた
 
 

 




私は記憶喪失で

愛する人を忘れていたんです


 
そう
 
早く、伝えなきゃ

トウマさんのためにも、私のためにも……


そのことだけが頭を支配して
他愛のない話にぎこちなく笑ってしまっていた私にトウマさんが気付かないはずがなかった


 
 

 
「……Aさん」


『っは、い』
 
 


おすすめだという料理に少し感動していると

落ち着いた声のトウマさんが私を見据える


 



 

「僕、Aさんと結婚を前提にお付き合いしたいと思ってます」

 

『……っ』



「初めて会った時からそう思ってました」
 
 
 

 

初めて、会ったときから


その言葉がまた胸を加速させる



 


『……あの、わたし』




早く、言わないと

ごめんなさいってちゃんと

 
 

 
「やっぱり好きな人には幸せになってほしいなって思ってて」



「Aさんの想う人って……」




すらすらと話す彼の言葉が耳を抜ける


でも、
 



「田中さん、ですか?」




『、……どうして』




そんな予想外の言葉に頭の中が白くなった




どうして、トウマさんが樹くんを……

 



「ごめんなさい
 あの時拾った紙……見てしまって」


 
 


……あぁ、そうだ


私はそれを落としてしまって


拾ってくれたトウマさんが


あの時本を拾ってくれた樹くんと重なって



 


「もっとはやく出会えてたら……って、思っちゃったりしたんですけど」



「僕はAさんの幸せ願ってるんで」


 
「今回のお見合いは無かったことにしてくれませんか?」
 

 


優しく笑ったり、泣きそうな顔だったり、また優しく笑ったり


この人は本当に……


 



『……っごめんなさい』




 
 
 
彼の優しさに

 
申し訳ない気持ちでいっぱいで


謝罪の言葉しか出てこない



 

私はどれだけの人を傷付けているんだろう
 

○→←eveal



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椿(プロフ) - ヒヨリさん» ヒヨリさんっ最後までお付き合い頂き本当にありがとうございます!!そう言って頂けて光栄です(TT)次のお話でもお会いできること願っておりますっ…… (2019年9月15日 21時) (レス) id: ae11041bb5 (このIDを非表示/違反報告)
ヒヨリ - 椿さん» めっちゃ面白かったです!!短編集も見させていただけます。 (2019年9月15日 19時) (レス) id: 61e4e164fd (このIDを非表示/違反報告)
椿(プロフ) - ヒヨリさん» コメントありがとうございます。そう言っていただけて本当に幸せです(;-;)ゆっくり更新で申し訳ありません。これからも楽しんでもらえるよう頑張ります!! (2019年8月29日 15時) (レス) id: ae11041bb5 (このIDを非表示/違反報告)
ヒヨリ - めっちゃ面白いです!更新頑張ってください。応援してます。 (2019年8月29日 13時) (レス) id: 61e4e164fd (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:椿 | 作成日時:2019年8月21日 4時

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