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uin ページ27

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『さよなら……』



そう口に出すと、


胸が押し潰されるように痛くなった


　

どうしよう、


泣かないって決めたはずなのに

　
　
　
背中を向ける前に見えた田中さんは
眉間にシワを寄せて俯いていて。


　
初めて出会った日を思い出した

　

　
　

ここから電車で帰ったら、家には何時に着くかな


ゆらゆら揺れる視線の中、冷静にそんなこと考えてる自分に少し驚いたけど、
　
　
　

砂を引きずる私を引き止めてほしい

本当は傍にいたい

　

なんて、身勝手な思いが邪魔をする。

　
　
　
　

　

　
「……待って ！」






でも田中さんはあの日のように私を引き止めてくれた
　



　

『……』

　

　
　

嬉しいと思ってしまう、感情を押し殺して
　
　

　

　

　
「……今まで、ごめん」
　

「絶対、幸せになって？」


　
　
　

　
夕陽に照らされながら、


田中さんはそう儚げに笑った

　
　
　


『……っ幸せに、なります』

　
　
　
　

　
私から、言ったはず


もう会わないと決めてたはず


なのに、どうして胸が張り裂けそうになるのか



　
良かった。

これで。
　
　
　
　
　
　
.

　
　

　
私がお見合いをする理由。


　
母にこれ以上迷惑をかけたくないから。

　

2年前の事故に遭って、


何も出来なかった私を


ずっと傍で看病してくれていた。



だから、私の幸せを願って

結婚を勧める母の想いに


早く応えたかったの。

　
　
　
それが、田中さんとだったら……

　

って、夢のような願いを抱いて
　
　

でも、きっと田中さんは私を好きじゃない


騙されてるだけかもしれない


指輪の意味だって、本当かなんてもう信じられなくなった

　



だから、


この関係に終止符を打って。
　



お見合いをして、

結婚をして、

母の喜ぶ顔を見て

　
　

　
そしたらきっと。


私は、幸せになれる。


　
　
あなたと出会った3ヶ月間は

きっと忘れられないけれど、

　
もう振り返らない。
　





　

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