Agapanthus (ページ3)

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物心ついた時から……いや、そのもっと前から僕はなにかしらの真似とかフリとかするのが好きだった。

何かを演じるとかなりきるとか得意だったんだ。

踊りも歌も下手だけど、ちゃんと踊ってるように魅せたり歌ってるように魅せたりできた。

なんとなく、なんとなくが積み重なって……

いつの間にか僕はかなり多くの人に知られる人間になったのかもしれない。

mn｢今度のドラマ、主題歌の話なんだけど……｣

放送局の控え室。

マネヌナの化粧が濃いことと、ソワソワしてることがいつもと違うだけで他は特に何も変わりはないけど、ただそれだけが異常に目立ってた。

僕の中では、ね。

mn｢BTSさんって知ってる……？｣

あー……うん、

mn｢知らないよね……｣

ギリ、知ってる気もする。

ってことはあんまり知らないのかも。

駄目だな、知らないって別に誇れることじゃないよ。

無知なだけなのに……あまりにも他人に興味が無さすぎてマネヌナを困らせることが多い。

自分でいっぱいいっぱいなんだ、許して。

｢ごめんなさい。｣

mn｢いやいや、いいの！｣

いいってわけではないと思う……。

mn｢ってか今まで言わなかったけど私、BTSのファンで……｣

あぁ、なるほど。

興奮の原因はそれか。

｢そうなの？知らなかった。｣

mn｢まあちょいちょいグッズとか目にしてたと思うけど……｣

そう言ってヌナがカバンから取り出したのは……ミートボールみたいなキャラクター。

なんか見覚えあるけど流してたな。

mn｢ふへへ、｣

｢……。｣

僕には何がかわいいのか理解できないけど、とにかく愛しそうに撫でるから相当好きなんだなって分かる。

それで今日、ヌナがめかしこんでる理由は？

mn｢今日の撮影後、BTSの皆さんがわざわざ来てくれるのよ。｣

薄々察してたけど、そういうことね。

｢楽しみだね。｣

mn｢うん！｣

ウキウキのヌナ、面白いな。

mn｢……。｣

何か言いたそうな顔をしてる。

ちょっと分かってきたよ、そういう表情。

mn｢あー……私は、SUGAのラップはもちろん作曲への姿勢が好きで、ペンになったの。これ、SUGAのキャラクター。｣

急な推しの紹介に戸惑ったけど向けられたミートボールにお辞儀をする。

mn｢向こう、かなりAに会いたがってる。｣

｢……はぁ。｣

mn｢その、なんていうか……気をつけてね。｣

｢……？うん。｣

このとき僕は、ヌナのその言葉の真意には気が付かなかったんだ。