Agapanthus (ページ16)

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朝と夜ページ16

･A

ズキ、と痛む腰と少しヒリヒリする手首足首の刺激で目が覚めた。

｢…い"っ、｣

意識が冴えていくにつれてその痛さが、昨晩の出来事が現実であるいうように体に襲いかかってきた。

服は……着てない、周りに人もいない。

カーテンの隙間から朝日が差し込んできて眩しい。

ブー、と震えるスマホを手に取った。

こんな所に置いたっけ……

mn『もしもしA？まだ地下に来てないみたいだけど大丈夫？寝坊？』

｢……。｣

mn『はあ、寝坊ね。パジャマのままでいいから降りてきて。今日は大事な撮影があるでしょ。』

｢撮影……｣

mn『忘れたの？BTSの皆さんとリヨンさんと対談するの。』

は……？

そんなのあったっけ。

mn『とにかく間に合わないとだから！』

そう言ってブチッと切られた通話。

嘘でしょ……また会わないといけないの。

ジョングク、ジミン、V……。

最悪だ。

｢……。｣

カァッと熱くなる頬を冷やしたくて、洗面所で水を被ってからテキトーな服に着替えて外に出た。

昨晩の記憶が一気に脳を支配する。

僕は、あんな犯罪まがいなことされたのに自分から求めた。

気持ちよくて、快感に溺れた。

世界的なアイドルに……襲われて、絆されて、流されるままに。

mn｢おはよう、それ衣装ね。ラフな格好だけど首元気をつけて。｣

｢……｣

mn｢はぁ、Aったら反抗期？返事くらいしてくれないとヌナ寂しいんだけど。｣

｢ごめん、｣

後部座席のカーテンを閉めて、着替える。

衣装である白のカジュアルな襟シャツにジーンズを履いた。

mn｢この調子だと間に合いそうね。｣

｢良かった、｣

mn｢それにしても珍しいね、寝坊だなんて。｣

冷静に家を出たけど、これってけっこうやばいんじゃないの。

なんでヌナに言わないの。

その理由を頭の中でグルグル考えた結果。

なんにも証拠が残ってないからだって気づいた。

僕の記憶だけだ。

夢みたいな、幻みたいな……

あれ、もしかして、全部夢なんてことない？

そっちの方が都合いい……なんて。

mn｢着いたよ。降りて。｣

なんか、気のせいな気がしてきた。

だって有り得ない。

僕を襲ったなんのメリットがある？

僕が警察沙汰にすれば……僕もやりづらけど彼らの方が今の地位や名誉が全て水の泡になる。

色々考えたけど……やっぱり気のせいだ。

腰の痛みも、身体中なんだかヒリヒリするのも……寝違えただけ。

変な夢見ただけだ。