そばにいる俺を見て ページ48
「多分ね、一目惚れだった」
「ひとめぼれ……」
「Aちゃんが泣いた日ね、不謹慎だけど、綺麗だな、って思った」
「きれい?」
「Aちゃん元々可愛かったけど、泣き顔はね、大っきい瞳から大粒の涙をぼろぼろ流してて、ああ綺麗だな、って自然と思ってたんだ」
「……なんか恥ずかしい」
「ふふふ。それで、ストンと恋に落ちてて、気づいたらAちゃんのこと目で追ってたの」
「……うん」
「Aちゃんは、なんだかいっつも泣きそうな顔してたから、笑った顔が見たいな、って思って、仲良くなろうって決めた」
「……なれたよ」
「うん、すっごく嬉しかった」
遥樹くんが、はは、って笑った。
「Aちゃんは工藤くんとはただの幼馴染だって言ったけど、そんなの嘘だってすぐにわかった」
「……」
「Aちゃんは、工藤くんのこと好きなんだよね」
「……うん、好きなんだと思う」
「うん。でもAちゃんは、諦めようって思ってたのかな?なんでもないように振る舞ってた」
「新一は、蘭ちゃんのことが好きだから……」
「うーん。それに関しては何にも言えないけど」
遥樹くんが困ったように頬をかいた。
目線は真っ直ぐ前を向いてて、多分新一のこと見てるんだろうな、って思った。
「Aちゃんの工藤くんを見る目は悲しそうで、寂しそうで」
「そんな目してたかな……」
「してたよ。でも時々、工藤くんのこと大好き!って感じで見るから、見るのがつらかった」
「……ごめん」
「でもね、悲しい顔しかさせない工藤くんより、俺の方が全然いいって思った」
「……え?」
「俺なら、たくさん笑わせられる」
「……」
「実際、俺といるときのAちゃん、楽しそうだったし」
「……うん、楽しかった」
でも、そう思うのと同時に。
私はどれくらい、あなたのことを傷つけてたの。
「正直に言うと、工藤くんより俺の方が、Aちゃんの近くにいるんだって思ってた」
「近く?」
「そう。でも、近くにいるのに、Aちゃんは俺を見てくれない」
「……」
あれれ?なんだか。
遥樹くん、すごく私に似てる気がする。
新一が、近くにいる私を見てくれない、って嘆く私に。
「俺がいるよ、そばにいる俺を見てって、ずっと思ってた」
「……」
「でもきっと、俺じゃダメなんだろうね」
「……ダメ?」
「やっぱりAちゃんには、工藤くんが一番だよ」
「え……」
「俺は、工藤くんのことが好きなAちゃんが好きだよ」
遥樹くんがそう言って、私の頬に触れた。
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極・吹雪姫 - ちょっとびっくりしたのが、弟の瑞紀(みずき)と私の「ミズキ」が被ったことだわね。 (2019年5月2日 20時) (レス) id: c4455a25af (このIDを非表示/違反報告)
極・吹雪姫 - ごめんなさい、本当に途中で泣きそうになったわ。「泣く」ですわ。泣いたページ。 (2019年5月2日 20時) (レス) id: c4455a25af (このIDを非表示/違反報告)
紅葉(プロフ) - こいつらまだ小学生だった…!なんつー濃い恋愛を…!この小説すごく好きです!遥樹くんのちょっとした嫉妬がこぼれて、それを見てとても切なくなる。ヒロインの気持ちはよく理解できるけど、やっぱり遥樹くんがいちばん好きです! (2019年3月11日 10時) (レス) id: 7ac5223945 (このIDを非表示/違反報告)
松野かほ(プロフ) - 遥樹くんの読み方を今初めて知った← (2019年2月13日 15時) (レス) id: 45fd1e6358 (このIDを非表示/違反報告)
みお - この小説好きです!正直言うと新一より遥樹くんの方が好きだったのでくっついて欲しかったなぁって思ってます() (2018年6月8日 19時) (レス) id: 0646f7c2e0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みやの | 作成日時:2018年3月1日 22時