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新学期 ページ33

暗い気持ちのまま、夏休みがおわった。
いい思い出なんて、ひとつもなかった。

発表会はあんまり覚えてない。
何を考えながら弾いてたのかも、間違わずに弾けていたのかも、なにもわからない。
ただぼんやり、哀川先生に心配されたなぁ、っていう記憶が残ってる。

待ち合わせ場所で久しぶりに新一と会って、ビクつく。
バチッと目が合った。

「A!久しぶり!」
「……新一」
「あれ?なんか顔色悪くねぇ?」
「暑くて……寝れなくて……」
「ふーん。それに、痩せたなお前」
「食欲もなくて……」
「夏バテか?」
「多分……ねぇ、新一」
「なんだ?」
「……怒ってないの?」
「怒る?なにに?」
「だって私、夏休み中、全然遊べなかったし」
「ピアノがあったんだろ?」
「人付き合い悪いって、思わなかった?」
「別に?頑張ってて偉いなーって思ってたぞ」
「……ほんとに?」
「本当。だから邪魔しちゃ悪いなった」

あれれ?もしかしたら。
新一と蘭ちゃんが遊ぼうって言わなくなったのって。

「だから、段々誘わなくなったの?」
「え?」
「邪魔しないようにって思ったから、誘わなくなったの?」
「ああ、うん。そうだよ」
「……そっかぁ……」

それじゃあ、つまんないって思われたわけじゃなかったのかな。
はぁーっと安堵する。

「どうした?」
「ううん、嫌われたんじゃなくて、よかったなぁって」
「俺がAを?嫌う?」
「うん」
「なるわけねーだろ」
「……うん」

ははっと新一が呆れたように笑った。
少しだけ気持ちが晴れた。


学校に行ったら、昇降口で和花ちゃんと千花ちゃんにバッタリ会った。
ドキッとする。

「……あ」
「……Aちゃん、おはよー!」
「……おはよう!」
「電話でごめんね、つまんないなんて言っちゃって」
「ううん、私こそごめん、ピアノばっかりで。そりゃあつまんないって思うよね」
「いいの!かわりに冬休みとか、いっぱい遊ぼう!」
「うん!」

あとでお土産渡すね、と和花ちゃんが微笑んだ。
ああ、よかった。
いつも通りだ。

卒業までもう少しだもん。
せっかくできた友達なのに、決裂することになんなくて、よかった。
心底ほっとする。

和花ちゃんが嬉しそうに新一に挨拶してる。
新一は嫌そうに顔を歪めた。

「Aちゃん!おはよう!」
新一の後ろから、遥樹くんが出てきた。

「遥樹くん、久しぶり!」
「夏休み楽しかった?」
「うん!」

「……」
新一が、私と話す遥樹くんを睨んだ気がした。

兄妹のスキンシップ→←つまんない



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極・吹雪姫 - ちょっとびっくりしたのが、弟の瑞紀(みずき)と私の「ミズキ」が被ったことだわね。 (2019年5月2日 20時) (レス) id: c4455a25af (このIDを非表示/違反報告)
極・吹雪姫 - ごめんなさい、本当に途中で泣きそうになったわ。「泣く」ですわ。泣いたページ。 (2019年5月2日 20時) (レス) id: c4455a25af (このIDを非表示/違反報告)
紅葉(プロフ) - こいつらまだ小学生だった…!なんつー濃い恋愛を…!この小説すごく好きです!遥樹くんのちょっとした嫉妬がこぼれて、それを見てとても切なくなる。ヒロインの気持ちはよく理解できるけど、やっぱり遥樹くんがいちばん好きです! (2019年3月11日 10時) (レス) id: 7ac5223945 (このIDを非表示/違反報告)
松野かほ(プロフ) - 遥樹くんの読み方を今初めて知った← (2019年2月13日 15時) (レス) id: 45fd1e6358 (このIDを非表示/違反報告)
みお - この小説好きです!正直言うと新一より遥樹くんの方が好きだったのでくっついて欲しかったなぁって思ってます() (2018年6月8日 19時) (レス) id: 0646f7c2e0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:みやの | 作成日時:2018年3月1日 22時

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