そばにいる私をみて【名探偵コナン】

約束しよう ページ29

今、私たちを繋ぎ合わせてるのは、なに？

幼馴染という関係？
通う学校が同じってこと？
共通の友達がいること？

それはきっと、どれも正しい。
私たちは、生まれたときから一緒にいるから、12年経った今でも、一緒なんだ。

じゃあもし、幼馴染じゃなかったら？
ただのクラスメートとして出会ってたら？
多分、ただの友達になって、浅く関わることになってたんだ。

たまに出る癖も
ちょっとした仕草も
言うことも、思考回路も、口癖も

私と新一は、全部おんなじ。
私たちは元々ひとつの命だったんじゃないか、って思うくらい、全部が同じだ。

新一は、私の半身で。
きっと新一の半身も、私で。

私たちは、二人で一つなんだ。

今までずっと一緒だった。
だけど、これから先も私の隣に新一がいる、なんて、そんな保証はない。

中学校は一緒だけど、高校が同じになる可能性は、きっと低い。
その先の進学先も、就職先も、絶対に同じにはならない。断言できる。

……私の世界から、新一がいなくなる？

ゾッとした。
それは、自分の半分を失うのと、同じこと。
半身がなくなったら、私は何もできない。

こわい。
こわいよ。

失うのが、怖い。
何よりも大事なもの。
どんなものを賭けてでも、守りたい。
それが私にとって、新一という存在。

幼馴染っていうのは、特別なようで、儚く脆い。いつか必ず、消えるもの。

幼馴染じゃなくなったら、私たちはただの他人？……きっとそう。
私たちを繋げるのが、幼馴染という関係だけなら。

新しいもので、私たちを結べばいい。

「……ね、新一」
「なんだ？」
「新一、バイオリン弾けるって言ったよね」
「え？ああ、言ったけど」
「じゃあさ、約束しよう」
「ん？」
「私とデュオしよ」
「デュオ？」
「うん。私のピアノと、新一のバイオリンで」
「いいけど……今じゃダメなのか？」
「今じゃダメ」
「ふーん……」

今の私のピアノは、まだまだ下手くそ。
もっと上手くなってからじゃないと。
それに、今デュオしたら、幼馴染じゃなくなったとき、私たちを結びつけるものが何もなくなっちゃう。

これは、私と新一を他人にしないための、約束。

「曲は、そうだな……何がいい？」
「ベートーヴェンのソナタとか、クロイツェルとか？」
「バッジーニの妖精の踊りもいいね」
「おー。じゃ、その3曲くらいか」
「そうだね」
「じゃーそれまでに練習しなくちゃだな」
「うん、私も、もっともっと頑張らなきゃ」

今の私には、これが、精一杯。

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