初恋 ページ22
それから。
恋心を忘れて、本当の妹のように新一と接してたら、案外過ごしやすくなった。
鋭い新一には少し怪しまれたけど、上手く話をそらしたり誤魔化したりすれば、だんだん怪しまれることもなくなった。
前みたいに泣くことはすっかりなくなって、新一や蘭ちゃんの前では、常に笑えるようになった。
心にポッカリ空いた穴は、知らないフリ。
新一とは、私の家の書斎にいることが多くなった。
「新一、この前貸した本読んだ?」
「ツルゲーネフの?」
「そう」
「読んだよ」
「どうだった?」
「まあ……面白かったよ……」
「何その言い方」
「やっぱり推理小説の方が面白いな、と」
「ああ……新一には恋愛より、推理の方が似合ってるね」
「だろ?」
自分で言っちゃうんだ。
ふふ、と笑う。
「読んだ感想は?」
「題名の割には、重い話……?」
「重い?」
「まあ、恋は盲目ってやつだな」
「初恋は実らない?」
「そうそう」
「やっぱり、私の初恋も散ったし、」
「初恋……?誰?」
新一が私の言葉を遮った。
「……さあね」
「……」
「やっぱり、恋には妥協が必要なのかな」
「小学生が言うセリフじゃない……」
「ふふふ」
笑い合う。
いつからか、この時間が心地よくなっていた。
「……なあ?」
「うん?」
「お前さ、やっぱり」
新一がなにか言いたそうにしてるのに、言いづらそう。
「なに?」
「……お前、何かあったの?」
「え?」
「ちょっと変わったよな」
「……変わった?」
「何て言うだろうな、雰囲気?というか、表情、というか……」
「どう、変わったの?」
「うーん、言葉にするのが難しいな……」
「なにそれー」
くすくす笑う。
変わったのは、きっと、新一を見る目。
「変わるのは当たり前よ、成長してるんだから」
「ああ……」
「新一は、声が低くなったね」
「マジ?」
「うん、もう可愛くない」
「可愛い声は嫌だな……」
「背も伸びたね」
「あー、いつの間にかお前抜かしてんな」
「うん、ちょっとだけ、怖いな」
「怖い?」
「ちょっとだけ、ね」
「……」
口を尖らせて、考えてる顔になった。
「遥樹くんも、周りの男の子たちも、みーんな成長しちゃって、声も大きくなって」
「……うん」
「力もきっと強くなってるんだろうな、腕相撲しても負けちゃうね」
「試してみるか?」
「やだよ、負けるじゃん」
「あれ、負けず嫌い?」
「実はね」
新一が、へえ、って感じで微笑んだ。
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極・吹雪姫 - ちょっとびっくりしたのが、弟の瑞紀(みずき)と私の「ミズキ」が被ったことだわね。 (2019年5月2日 20時) (レス) id: c4455a25af (このIDを非表示/違反報告)
極・吹雪姫 - ごめんなさい、本当に途中で泣きそうになったわ。「泣く」ですわ。泣いたページ。 (2019年5月2日 20時) (レス) id: c4455a25af (このIDを非表示/違反報告)
紅葉(プロフ) - こいつらまだ小学生だった…!なんつー濃い恋愛を…!この小説すごく好きです!遥樹くんのちょっとした嫉妬がこぼれて、それを見てとても切なくなる。ヒロインの気持ちはよく理解できるけど、やっぱり遥樹くんがいちばん好きです! (2019年3月11日 10時) (レス) id: 7ac5223945 (このIDを非表示/違反報告)
松野かほ(プロフ) - 遥樹くんの読み方を今初めて知った← (2019年2月13日 15時) (レス) id: 45fd1e6358 (このIDを非表示/違反報告)
みお - この小説好きです!正直言うと新一より遥樹くんの方が好きだったのでくっついて欲しかったなぁって思ってます() (2018年6月8日 19時) (レス) id: 0646f7c2e0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みやの | 作成日時:2018年3月1日 22時