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ごめんね ページ14

次の日。
新一は、2時間目がおわってから登校してきた。

蘭ちゃんや和花ちゃんを見たら、嬉しそうに笑ってて、ああ好きなんだなぁ、って思った。

謝るって決めたのに、いざとなったら話しかけられない。
授業中とか、新一が私になにか言いたそうにちらちら見てきたけど、知らないフリした。

なんとなく避け続けてて、気づいたらもう放課後。
今を逃したら、きっと私は一生謝らない。
言わなくちゃ。

「……し、新一!」
「……A」

新一が、ほっとしたような、安心したような顔をした。
その顔をみたら、ぐうっと胸に何かがこみ上げてきて、泣きそうになった。こらえる。

「……一緒にかえろう」
「おう」
なんとかしぼりだした言葉が、そっけなくなっちゃった。
大丈夫?
新一、怒ってない?
細かいことが、ついつい気になる。

「……」
「……」

沈黙の帰り道。
ドキドキ。
鼓動が勝手にはやくなって、新一に聞こえてない?と不安になる。

肩を並べて止まる赤信号。
明るい街の喧騒。
枯れて下を向く向日葵の花。
地面に散らばる赤茶色の落ち葉。

茜色の夕焼け空に、飛行機雲。
緑が生い茂る空き地。
夏色を少し含んだ、優しい風。
あんなにうるさく鳴いてた蝉の声は、もう聞こえない。
ほのかに感じる秋のおとずれ。

いつもと同じ帰り道なのに、どこか違って見える景色。
きっとそれは、新一が隣にいるから。
どんなに寂れた景色でも、キラキラ輝いて見えるの。

ぽたぽた、と涙が落ちた。
私が泣いてるのに気づいて、新一が慌てる。

「A、どうした?」
「新一」
「ん?」
「しんいち……」
「……A」

堰を切ったように、涙が溢れ出る。
「ごめんね」
「A……」
「心にもないこと言っちゃって、ごめんね」
「いいよ」
「傷つけて、ごめんね」
「大丈夫」

背中を優しくさすってくれる。
さらにあふれる涙。

「俺は大丈夫」
「うん……」
「俺こそごめんな、Aがあんなこと思ってたなんて、気づけなかった」
「ううん」
「いちばん近くにいるはずなのに」
「うん」
「俺、Aのこと、全然知らなかった」
「……わたしも」
「でも、わかった」
「……え?」
「おまえは、なんにも変わってないよ」
「かわってない?」
「泣き虫で、なんでも顔に出て、優しい、昔と同じAだ」
「……」

優しくなんてない。
私は、やさしくなんてないよ。
だって、優しかったら、初めから傷つけることなんてない。

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極・吹雪姫 - ちょっとびっくりしたのが、弟の瑞紀(みずき)と私の「ミズキ」が被ったことだわね。 (2019年5月2日 20時) (レス) id: c4455a25af (このIDを非表示/違反報告)
極・吹雪姫 - ごめんなさい、本当に途中で泣きそうになったわ。「泣く」ですわ。泣いたページ。 (2019年5月2日 20時) (レス) id: c4455a25af (このIDを非表示/違反報告)
紅葉(プロフ) - こいつらまだ小学生だった…!なんつー濃い恋愛を…!この小説すごく好きです!遥樹くんのちょっとした嫉妬がこぼれて、それを見てとても切なくなる。ヒロインの気持ちはよく理解できるけど、やっぱり遥樹くんがいちばん好きです! (2019年3月11日 10時) (レス) id: 7ac5223945 (このIDを非表示/違反報告)
松野かほ(プロフ) - 遥樹くんの読み方を今初めて知った← (2019年2月13日 15時) (レス) id: 45fd1e6358 (このIDを非表示/違反報告)
みお - この小説好きです!正直言うと新一より遥樹くんの方が好きだったのでくっついて欲しかったなぁって思ってます() (2018年6月8日 19時) (レス) id: 0646f7c2e0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:みやの | 作成日時:2018年3月1日 22時

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