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知恵熱 ページ13

「Aごめん、お醤油なくなっちゃったから、買ってきてくれる?」
「うん、いいよ」
「お願いね」

お母さんにお金をもらって、近くのスーパーに向かう。

いつも使ってる醤油を探してたら、声をかけられた。

「あら!Aちゃん!」
「……有希子さん!」
「偶然ね!おつかい?」
「うん、そうだよ」

なんとなく、顔を合わせづらい。

「偉いわねー!うちの新一にも見習わせたいわ!」
「有希子さん、新一、今日風邪って」
「ああ、知恵熱かしらねー」
「知恵熱?もう赤ちゃんじゃないのに?」
「昨日ずーっと考えごとしてたから、脳が疲れちゃったんじゃないかしら」
「そうなんだ……」

やっぱり、私が言ったこと気にしてるんだ。
つのる後悔。

「Aちゃん、最近うちに来ないわね。昔は毎日のように来てたのに」
「ああ……新一、最近私と遊んでくれないから」
「そうなの?」
「たぶん、蘭ちゃんとおしゃべりしてた方が、楽しいんじゃないかな」
「そんなことないわよ!」
「えー?」

慰めで言ってくれたのかと思ったけど、ちがう。
真剣な表情。
本当のこと、言ってるんだ。

「だって新一、口を開けばAちゃんのことばっかり!」
「私のこと?」
「今日はAがこうだった、とか、Aにこんなことがあった、とか」
「……」
「楽しそうな顔で話してるわよ」
「うそ……」

なんで。
新一、どういうこと?
私のこと、どうでもいいんじゃないの。

「……有希子さん」
「なあに?」
「新一、昨日私の家から帰ってきて、どんな感じだった?」
「昨日?」
「傷ついたり、してなかった?」
「傷つく……ああ、そういえば」
「なに?」
「言ってたわ。『A、誤解してる。あいつはあいつなのに』って」
「……」

ああ、もう、なんだか。
申し訳なさで、胸が押し潰されそう。

「もしかして、喧嘩した?」
「うん……」
「珍しいわね」

ポンポンと、有希子さんが私の頭を撫でた。

「有希子さん」
「ん?」
「ひとつ、伝言頼んでいい?」
「どうしたの?」
「『ごめんね、ありがとう』って、新一に言ってくれる?」
「……わかったわ。言っておく」
「ありがとう……」

「……大丈夫よ。新一、怒ってなかったから」
「うん」
「すぐに仲直りできるわよ。だって、二人はずーっと一緒だもの」
「……うん」

すんっと鼻をすする。

明日、新一に謝ろう。
ごめんね、って。
嘘だよ、って。
ちゃんと、言おう。

ごめんね→←どうして



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極・吹雪姫 - ちょっとびっくりしたのが、弟の瑞紀(みずき)と私の「ミズキ」が被ったことだわね。 (2019年5月2日 20時) (レス) id: c4455a25af (このIDを非表示/違反報告)
極・吹雪姫 - ごめんなさい、本当に途中で泣きそうになったわ。「泣く」ですわ。泣いたページ。 (2019年5月2日 20時) (レス) id: c4455a25af (このIDを非表示/違反報告)
紅葉(プロフ) - こいつらまだ小学生だった…!なんつー濃い恋愛を…!この小説すごく好きです!遥樹くんのちょっとした嫉妬がこぼれて、それを見てとても切なくなる。ヒロインの気持ちはよく理解できるけど、やっぱり遥樹くんがいちばん好きです! (2019年3月11日 10時) (レス) id: 7ac5223945 (このIDを非表示/違反報告)
松野かほ(プロフ) - 遥樹くんの読み方を今初めて知った← (2019年2月13日 15時) (レス) id: 45fd1e6358 (このIDを非表示/違反報告)
みお - この小説好きです!正直言うと新一より遥樹くんの方が好きだったのでくっついて欲しかったなぁって思ってます() (2018年6月8日 19時) (レス) id: 0646f7c2e0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:みやの | 作成日時:2018年3月1日 22時

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