＊ ページ44
コポコポコポ……
外では生活音が聞こえていたのに、何故か静かなこの部屋の中で、私はソファに座らされている。
そして部長はコーヒーを淹れてくれている。
無言。
さっき、私を外国人から助けてくれた部長。
やっぱりよく分からない英語で外国人と笑いながら会話すると、外国人は私を見て「Sorry」って謝ってくれた。
何て言えばいいか分からず「You're welcome」と言うと、「お前は乱暴されそうになってどういたしましてすんのか」って蔑んだ目で言われた。
そしてまたも腕を引っ張られて、部長の部屋に放りこまれた。
「そこにでも座っとけ」って乱暴に指さされたソファにちょこんと座る。
あぁ、この雰囲気、居たたまれない。
サプライズで来たことは悪かったと思う。
でも、もう少し感動の再会みたいなものを期待していた。
こんな、怒ってる部長……やだよ。
「熱いから気を付けて」
無造作にテーブルに置かれたコーヒー。
流石にこの家にはココアは無かったみたいで、でも牛乳を入れてくれたのか優しい色のコーヒーだ。
「いただきます……」
「……」
部長はソファに座らず、キッチンのシンクでコーヒーを飲んでいる。
シンクに寄り掛かって飲む姿は、私たちの家で飲む姿とどうしてもリンクして、泣きそうになる。
そうだ。
部長が怖いとかじゃなくって。
久しぶりに会えたんだよ。
「翔くん……」
「……」
マグカップをテーブルに置いて、部長の方を見て言った。
画面の中の部長は、翔くんって呼ぶとあんなにも嬉しそうだったのに、今目の前の部長は私と目すら合わせてくれない。
「あの……すみませんでした。勝手に来て」
「……」
「ナギサさんが、有給が残ってるから消化してって言われて、急にこの一週間休みになって……」
「……」
「みんなが、翔くんのとこ行っておいでって後押しをしてくれて」
「……」
「サプライズってワケじゃないけど、でも、驚いてほしいって気持ちも少しあって……連絡入れずに来ました」
「……ここまでどうやって来たの」
ようやく話してくれた部長。
でもまだ目は合わない。
「空港からタクシーで。ナギサさんに貰った住所を見せて」
「……英語話せないくせに、よく来れたな」
「何とか……」
「で？アイツにどっか連れていかれそうになったってワケ」
「それは」
「俺来なかったらどうなってたか分かってんの？」
そう言って目を合わせてくれたその目は、まるで氷のように冷たかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2108人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
cori(プロフ) - Yuriさん» いつもありがとうございます！そろそろ帰国してほしいなーと思ってます笑 次移行しますのでもう暫くお待ちください！ (2019年6月4日 7時) (
レス) id: d86fdce482 (このIDを非表示/違反報告)
Yuri - いつも楽しく読ませていただいています！翔くんが帰国するお話が気になります！更新、待ってます！ (2019年6月4日 4時) (レス) id: d785c31dd6 (このIDを非表示/違反報告)
cori(プロフ) - kaz2nsariさん» はじめまして、コメントありがとうございます！ニヤニヤしていただけたとのこと、とっても嬉しいです…！早く帰ってきてもらわないと、まだ書きたいことたくさんあるので…！また覗きに来てくださいね〜！ (2019年5月28日 0時) (レス) id: d86fdce482 (このIDを非表示/違反報告)
kaz2nsari(プロフ) - はじめまして！読ませていただきましたが、終始ニヤニヤが止まりませんでした！！翔くんがNYから帰ってきたあとのお話が気になります！！ドキドキ。。 (2019年5月27日 19時) (レス) id: f127e1252b (このIDを非表示/違反報告)
cori(プロフ) - きみきみさん» こちらにもコメントありがとうございます！名前呼びをしてみました。仕事以外で部長と呼ぶとすこぶる怒ります笑 いつかのニノさんで言ってたことを言わせてみました。絶対履いてると思います笑 また来てくださいね！ (2019年5月22日 17時) (レス) id: d86fdce482 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：cori
| 作成日時：2019年3月26日 19時
