千年の恋 ページ11
その後、俺たちは空間の戻った琴鬼の屋敷を見てまわっていた。
鬼舞辻の名前を出したから、関わりがあるのではないかと予測して。
「鬼舞辻無惨の名前を出したね」
「うん。
よほどの関わりがあったんだろうね」
無惨様、彼女は死に際にはっきり、そう言った。
鬼舞辻の名を呼んだ彼女の瞳は澄んでいて、美しく、悲しげな瞳だった。
廊下を歩き、部屋を探りながら進んでいた。
ちょうど廊下の突き当たりの部屋。その部屋が無性に気になった。
「無一郎君、ちょっとこの部屋気になるんだけど」
「うん、突き当たりだから気を付けて」
無一郎君が刀を抜ける体制になった事を確認し、一気に障子を開けた。
すると、部屋にはたくさんの引き出し収納と
一つだけの机、そしてふとんがあった。
「なんだ、この部屋は。」
引き出しを見てみれば、たくさんの文が溢れ出て床にばさばさと落ちてしまった。
無一郎君が内の一枚を手に取り、軽く目を通した。
「文、、、?」
「いや、和歌だ。
内容を見る限り、二人の関係は恋仲、そして彼女は病気を患ってしまったと。」
本当の内容は、鬼舞辻が病気を患ってしまい、長期の間治療をしてもらったが一向に良くならず、投与された薬の影響で鬼になってしまったと言う物だった。
そして送った内容は大体把握できる。
私を鬼にしてください。
そんな内容を送ったのだろう。
そんなことできるはずが無いと言いつつも鬼舞辻は彼女を鬼にして、しばらくの間一緒に暮らし、仲良くしていたのだろう。
時が進むに連れ、書き方が和歌から詩に、詩から文になっていくその物をすこしの楽しさを持って読み進めた。
だが、ある文を最後に、二人の会話は終わっていた。
"琴葉、私は君を手放したくない。だが、君を手放さねば君が傷ついてしまう。
すまないがさようならだ、愛する琴葉。"
そう書いてある紙は鬼舞辻の物であろう涙と、彼女の物であろう涙の跡が付いていた。
劣化したしわくちゃな紙。
俺はそれを握り締めた。
「あの世で、奴のしている事、していた事をしっかり見てやってください。」
千年の恋も、冷めるはずですから。
1人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:Ro:A | 作成日時:2019年9月23日 3時