第6話 経緯 ページ8
「…っ」
まぶしさに目を慣らす間もなく、突然、物が倒れる音が聴覚を。紅が視界を支配した。
耳元で嗚咽と『良かった』と言う震えた声と、安堵の言葉が聞こえて、若様にずぶ濡れの自分を力強く抱き締められている状況と、何やら周囲の視線を集めている事態を理解し、優しく抱き締め返す。
「ただいま戻りました。若様」
若様が落ち着くのを見計らい、リムル様が話を促したため、素直に経緯を語る事にした。
姫様をシオンに託した時点で、『
(里に居るオーク共…、全員、消えろ)
膝を折り、地面に屈する事を自分に許さず、『
(治れ)
上手く発動し、皮膚が突っ張る程度に回復。続けて、一時停止したスキルの発動に成功。次に、魔物に元々備わっている魔力感知で、生存者を確認するも無反応だった。
立ち上がって煤けた里を周回して、骸となった同胞を一人一人土葬し、ふと空を見上げると、日の傾きから半日が過ぎた事に気づいた。気温が下がり、肌寒さを感じて身震いする。そこで手を休め、腰を下ろし、体を丸めて地面に横たわり眠りについた。
(おはよう)
一夜明け、挨拶をつぶやくが言葉を返す者はおらず、小鳥のさえずりだけが辺りに響く。就寝中に服についた土を払い、全員を埋葬後に里の外に出て、五体満足の身体を反転させ、深々と一礼した。
(今まで、ありがとうございました。行ってきます)
姿勢を正し、焼け野原になった故郷を記憶に留める。緩みかける涙腺に何度も我慢を強い、行くあてもなく里を後にし、ジュラの大森林を
腹の虫が鳴っては周囲になっている木の実や湧き水で飢えをしのぎ、日没後に水の綺麗な川辺で一張羅と体を洗っている最中、物音がした。身体に布を羽織るより自分の命を護るのが最優先と即断し、携帯している刃こぼれの酷い打刀を構え、その切っ先を向けた先に、一人の男が立っていた。
「それが従兄のソウエイで、今に至ります」
話を聞き終えた一同は、あたしがずぶ濡れの体と服の理由に合点がいったようだ。
486人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「転生したらスライムだった件」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
竜胆(プロフ) - 200回の投票を頂き、ありがとうございます。 (2023年3月8日 19時) (レス) id: 2d2249a2d0 (このIDを非表示/違反報告)
竜胆(プロフ) - お気に入りに入れて下さる方が、再び400人に到達! ありがとうございます。更新できるように頑張ります。 (2020年2月2日 21時) (レス) id: ce36bc58b0 (このIDを非表示/違反報告)
竜胆(プロフ) - 瑠亜@影月さん» 瑠亜@影月さん、コメントと応援ありがとうございます。心変わりしてしまうほどとは(笑)もう話が一杯になったので、ただいま続編に向けて考案中です。更新できるよう頑張ります! (2019年5月13日 1時) (レス) id: ce36bc58b0 (このIDを非表示/違反報告)
瑠亜@影月 - 私はソウエイが推しキャラだったんですが、若様に心変わりしてしまいそうです(笑)これも竜胆さんの文才の力ですね!これからも更新頑張ってください! (2019年5月12日 21時) (レス) id: 9b9cc1c6b7 (このIDを非表示/違反報告)
竜胆(プロフ) - 紫癸さん» 紫癸さん、コメントと応援ありがとうございます。お褒めの言葉も重ねて感謝します。ただいまコミック版最新話の展開を待機している状態なので、もうしばらくお待ち下さい。必ず更新します。 (2019年4月11日 22時) (レス) id: ce36bc58b0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:竜胆 | 作成日時:2018年12月1日 1時