第36話 決意 ページ38
「姫様。半着と、武道袴の依頼してもよろしいですか?」
「…え?」
今まで一度も和服に袖を通した事がない自分の依頼に、姫様は困惑の表情を隠す事もなく顔面に出されたが、すぐに職人の顔立ちになる。
「わかりました。どのような色を?」
「半着は、着物袖の白。袴は紺にして下さい。どちらも無地でお願いします」
「はい。私、頑張りますね」
「楽しみにしています。では」
若様に膝枕をした翌日。
昼食後に姫様の工房に足を運び、直々に依頼した。この後、クロベエの工房に直行する。
「失礼。クロベエ、いますか?」
「おや、A様でねぇか。今日は、どんな依頼だ?」
「短刀二振り。脇差三振り。打刀一振り。細かい注文は、ここに記しています」
そう言って、彼に一枚の布を手渡す。
『
「紋ってなんだ?」
「これです」
差し出した二枚目の白地の布に描いたのは、一つの紋。
緋扇に鷲の羽。
それが、代々武家である湊家の家紋──だったのだろう。
この表現の正しさはずっと後に明かされ、自分の中で組み立てた仮説と推測が間違っていなかった事が証明された。
「見た事のない印だな」
「ええ。生前の。ツムギさんが生まれた、ミナト家の家紋ですから」
だが、一枚目の布の最後に記した一文を見た途端、彼は血相を変えた。
「A様。これは…!?」
「それも頼む。クロベエ。最後の一文は、誰にも言わないでくれ」
「わかっただよ……」
クロベエの職場を背にして、何気なく自分の髪に触れてみた。
好きな御空色の髪が、お天道様の光を受け、幾分
「……」
里にいた頃は結えるほど髪が長く、腰まであった。
よし、伸ばそう。己の誓いを果たすまでは、絶対に切らない。そうすると、必要なのが――
「お。Aちゃんじゃないか」
「ドルド殿。この花を模した
細工工房で些細な注文を済ませ、これで、あの男を迎え討つ戦装束の支度ができた。
486人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「転生したらスライムだった件」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
竜胆(プロフ) - 200回の投票を頂き、ありがとうございます。 (2023年3月8日 19時) (レス) id: 2d2249a2d0 (このIDを非表示/違反報告)
竜胆(プロフ) - お気に入りに入れて下さる方が、再び400人に到達! ありがとうございます。更新できるように頑張ります。 (2020年2月2日 21時) (レス) id: ce36bc58b0 (このIDを非表示/違反報告)
竜胆(プロフ) - 瑠亜@影月さん» 瑠亜@影月さん、コメントと応援ありがとうございます。心変わりしてしまうほどとは(笑)もう話が一杯になったので、ただいま続編に向けて考案中です。更新できるよう頑張ります! (2019年5月13日 1時) (レス) id: ce36bc58b0 (このIDを非表示/違反報告)
瑠亜@影月 - 私はソウエイが推しキャラだったんですが、若様に心変わりしてしまいそうです(笑)これも竜胆さんの文才の力ですね!これからも更新頑張ってください! (2019年5月12日 21時) (レス) id: 9b9cc1c6b7 (このIDを非表示/違反報告)
竜胆(プロフ) - 紫癸さん» 紫癸さん、コメントと応援ありがとうございます。お褒めの言葉も重ねて感謝します。ただいまコミック版最新話の展開を待機している状態なので、もうしばらくお待ち下さい。必ず更新します。 (2019年4月11日 22時) (レス) id: ce36bc58b0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:竜胆 | 作成日時:2018年12月1日 1時