第30話 即答 ページ32
「その物言いだと、相当相手を恨んでるな」
「当然でしょう? あんな事をされて恨まない人がいるなら、よほどのお人好しか、頭がおかしいんだ」
顔も見た事がない身内の子孫が絡むと、途端に不機嫌になり、普段は吐かない毒を口にする。
先祖の縁は途切れずに今も続き、共感から味覚障害を起こす程の心に傷をつけた身内が、この世界で生き続けている。
「A。もしソイツに会ったら、俺が相手をしてやる」
「ありがとうございます。ですが、お気持ちだけ受け取らせて頂きます。これは、ツムギさんの子孫である自分が、きっちり片をつけるものですから」
本人は気づいていないだろうが、オーク討伐以来の殺意を含んだ笑みを浮かべた。
「怒るのも解るが、一度落ち着け。そこの店で休憩するか?」
「そうだな。ありがとう。フォビオ」
一時的とはいえ、気を紛らわせるために茶屋に誘ったフォビオに対して、一本取られたような苦々しさを感じ、Aの後ろに従った。そして、いくら
「まだ砂糖は発見していないんだな」
「砂糖? あんな高級品をどうするんだ?」
「女性陣でスイーツ同盟が結成されたんだよ。あたしは、甘いの苦手だけどさ」
「へぇ」
緑茶と一緒に出された焼き菓子は、砂糖の代用品として、少量の蜂蜜を使った一口大のお茶のクッキーだった。
「ん。うめぇ」
「あ。これなら大丈夫みたい」
Aとフォビオの気が合うらしく、また俺の横で他愛のない話が弾んでいる。それが面白くない俺は、次第に口数が減っていった。
Aがご機嫌になった頃を見計らい、茶屋を出て三叉路にさしかかった時、不意にフォビオの脚が止まる。釣られる形で俺達も脚を止め、数歩後ろの男に振り返った。
「どうした?」
「…A。俺は、気づいちまったらしい」
「何に?」
一呼吸して、意を決したように宣言する。
「Aが好きだ。あなたが良ければ、俺と恋人として付き合ってほしい」
突然の告白に数秒思考が追いつかなかったものの、直接的な表現でAは
「あたしを好きになってくれて、ありがとう。でも、ごめんなさい。今は誰とも交際する気はないんだ。昔より今のフォビオのほうが魅力的だから、友達としてこれからもよろしく」
俺は、即答だが丁寧で、余計な期待など持たせない断り方をしたAに惚れ直した。
486人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「転生したらスライムだった件」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
竜胆(プロフ) - 200回の投票を頂き、ありがとうございます。 (2023年3月8日 19時) (レス) id: 2d2249a2d0 (このIDを非表示/違反報告)
竜胆(プロフ) - お気に入りに入れて下さる方が、再び400人に到達! ありがとうございます。更新できるように頑張ります。 (2020年2月2日 21時) (レス) id: ce36bc58b0 (このIDを非表示/違反報告)
竜胆(プロフ) - 瑠亜@影月さん» 瑠亜@影月さん、コメントと応援ありがとうございます。心変わりしてしまうほどとは(笑)もう話が一杯になったので、ただいま続編に向けて考案中です。更新できるよう頑張ります! (2019年5月13日 1時) (レス) id: ce36bc58b0 (このIDを非表示/違反報告)
瑠亜@影月 - 私はソウエイが推しキャラだったんですが、若様に心変わりしてしまいそうです(笑)これも竜胆さんの文才の力ですね!これからも更新頑張ってください! (2019年5月12日 21時) (レス) id: 9b9cc1c6b7 (このIDを非表示/違反報告)
竜胆(プロフ) - 紫癸さん» 紫癸さん、コメントと応援ありがとうございます。お褒めの言葉も重ねて感謝します。ただいまコミック版最新話の展開を待機している状態なので、もうしばらくお待ち下さい。必ず更新します。 (2019年4月11日 22時) (レス) id: ce36bc58b0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:竜胆 | 作成日時:2018年12月1日 1時