第22話 不調 ページ24
「あのさ。Aって人間だった?」
「いえ。先祖のミナト・ツムギが人間で、異世界より転移し、
ドワルゴンから帰国したリムル様が、報告ついでに開いた会議終了直後に、Aに問いかけた。
「何故、その質問をされたんですか?」
「気になるから」
そこでAは、黙して主を一瞥する。最近判ってきた事だが、不機嫌になった時に示す態度だ。
「いずれきちんとお話しますので、それまで待って頂けますか?」
「……ああ。嫌な話をさせてすまなかった」
彼女は心から謝罪すれば許してくれるが、今まで怒った表情を見せた事はない。夕食は疲れた者の心身を温めるスープが出てきたが、Aは、まかないを食べなかった証拠に腹の虫が鳴っていた。
「A。ちゃんと食べましたか?」
「いえ。先ほどから食欲が湧かないのです」
「なら私が!」
「シオン。あたしの腹を壊す気か?」
「酷い!」
三人が談笑しているが、一人だけ心配な顔で見ている。廊下にて待機していたゴブイチが、温め直したスープと小さく盛られたサラダも小皿に添え、盆に乗せた状態で運んできた。
「Aさん。食べて下さい」
「大丈夫だ。ゴブイチ」
「貴女の大丈夫は、大丈夫じゃありません。味覚をなくされていますよね?」
『えっ!?』
彼の真剣な声音に、食堂に残っていた主要な面々は表情を険しくするが、予想外の言葉に、Aとゴブイチ以外の全員が驚愕の声をあげた。
「Aさんは、提案された献立を忠実に作りはしますが、数ヵ月前から味見は他の者に確認されている。畏れながらお聞きします。いつから症状が出たんですか?」
「歓迎の宴を開いた翌朝」
堂々と言い放ったが、それと同時に数日前の出来事が脳裏に浮かぶ。
あんなに美味そうにまかないと焼き串を食べていたのに、演技だったのか。
「皆々様。申し訳ございませんでした」
両膝を床につけたかと思えば、深々と頭を下げ土下座するAに対して、リムル様が問う。
「どうして黙っていた?」
「アニータが、ツムギの母の子孫だと判明した翌朝に、身内について報告をされました。詳細は話せませんが、それが原因です」
「味覚をなくすほど嫌な思いをした人がいるのか」
「自分ではありませんが、そうです」
主と
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竜胆(プロフ) - 200回の投票を頂き、ありがとうございます。 (2023年3月8日 19時) (レス) id: 2d2249a2d0 (このIDを非表示/違反報告)
竜胆(プロフ) - お気に入りに入れて下さる方が、再び400人に到達! ありがとうございます。更新できるように頑張ります。 (2020年2月2日 21時) (レス) id: ce36bc58b0 (このIDを非表示/違反報告)
竜胆(プロフ) - 瑠亜@影月さん» 瑠亜@影月さん、コメントと応援ありがとうございます。心変わりしてしまうほどとは(笑)もう話が一杯になったので、ただいま続編に向けて考案中です。更新できるよう頑張ります! (2019年5月13日 1時) (レス) id: ce36bc58b0 (このIDを非表示/違反報告)
瑠亜@影月 - 私はソウエイが推しキャラだったんですが、若様に心変わりしてしまいそうです(笑)これも竜胆さんの文才の力ですね!これからも更新頑張ってください! (2019年5月12日 21時) (レス) id: 9b9cc1c6b7 (このIDを非表示/違反報告)
竜胆(プロフ) - 紫癸さん» 紫癸さん、コメントと応援ありがとうございます。お褒めの言葉も重ねて感謝します。ただいまコミック版最新話の展開を待機している状態なので、もうしばらくお待ち下さい。必ず更新します。 (2019年4月11日 22時) (レス) id: ce36bc58b0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:竜胆 | 作成日時:2018年12月1日 1時