第20話 懐かしい感覚 ページ22
「手合わせと散策くらいしか俺には思い浮かばなかったんだが、…いいか?」
「はい。十分です」
なぜ、若様があたしを誘ったのか。
全く見当がつかないが、リムル様の護衛として彼の一面を知る良い機会だと思い、快諾した。しかし、彼と長話できるほど、お昼時の厨房は悠長ではない。魔都の住民全員の食事を作らなければならず、現在も食堂が繁盛している。
「失礼。厨房に戻ってもよろしいですか?」
「ああ」
一礼して去り、落ち着きつつある戦場へ帰還した。
「ゴブイチ。牛鹿の煮込みは?」
「作り置きも含めて、あと
「ん。良かった」
ぐぅ、と腹が鳴り、
「お疲れ様でした。夕方も頑張りましょう」
『お疲れ様でした!』
ゴブイチの短い激励と共に、厨房から解散。普段は皆と食事をするが、今日は違う行動を取った。
「若様。ご一緒してもいいですか?」
「ん? ああ」
「失礼します」
長机を挟んで、遅めの昼食を摂る。『頂きます』と手を合わせてから箸を手に取り、一切れの半分を口にすれば、甘味が感じられた。
やはり、昼飯は食べ応えのある肉に限る。それに米が進む。丼にして正解だった。
「Aは、美味そうに食べるな」
幸せそうに微笑んでいる彼に返答しようと、口元を片手で覆い隠して、咀嚼し、飲みこむ。
「…本当に美味しいんですもの。表情に出るのも仕方がありません」
しかし、若様の手元に視線を移せば、手は止まり、視線は丼の具材に向けられていた。
「料理人全員の意見が一致すれば、来月の献立に出ますから、それまでご辛抱下さいませ」
「……わかった」
あきらめて、牛鹿の煮込みを食べ進めていかれる。
「俺は、Aが厨房に立つまで、料理ができるなんて知らなかったよ」
「里にいた頃、母に教えられたので」
それは嘘じゃない。
父から護衛を学び、母から食材の調理法を直々に叩きこまれていたからだ。
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竜胆(プロフ) - 200回の投票を頂き、ありがとうございます。 (2023年3月8日 19時) (レス) id: 2d2249a2d0 (このIDを非表示/違反報告)
竜胆(プロフ) - お気に入りに入れて下さる方が、再び400人に到達! ありがとうございます。更新できるように頑張ります。 (2020年2月2日 21時) (レス) id: ce36bc58b0 (このIDを非表示/違反報告)
竜胆(プロフ) - 瑠亜@影月さん» 瑠亜@影月さん、コメントと応援ありがとうございます。心変わりしてしまうほどとは(笑)もう話が一杯になったので、ただいま続編に向けて考案中です。更新できるよう頑張ります! (2019年5月13日 1時) (レス) id: ce36bc58b0 (このIDを非表示/違反報告)
瑠亜@影月 - 私はソウエイが推しキャラだったんですが、若様に心変わりしてしまいそうです(笑)これも竜胆さんの文才の力ですね!これからも更新頑張ってください! (2019年5月12日 21時) (レス) id: 9b9cc1c6b7 (このIDを非表示/違反報告)
竜胆(プロフ) - 紫癸さん» 紫癸さん、コメントと応援ありがとうございます。お褒めの言葉も重ねて感謝します。ただいまコミック版最新話の展開を待機している状態なので、もうしばらくお待ち下さい。必ず更新します。 (2019年4月11日 22時) (レス) id: ce36bc58b0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:竜胆 | 作成日時:2018年12月1日 1時