第19話 人の誘い方 ページ21
「鬼人の女性陣で留守番は、Aだけか。どうだ? この際、誘ってみろよ」
Aの縁を知った数時間後。
リムル様はドワルゴンに国賓として招待され、その護衛にシュナとシオンが同行。里帰りのドワーフ三兄弟と、ゴブリンライダーも同伴する事が決まっている。
夕食時の食堂にて、喧騒のせいで会話の内容がAに聞き取られないのをいい事に、ドワーフ三兄弟がニヤケ顔で髭を撫でながら告げてくる。
「いや。リムル様がいなくても、仕事があるだろう?」
「そうか? おーい、Aちゃん! 明日は仕事あるかい?」
俺が茶をすすっている最中に、突然声を張り上げて呼びつけ、『ちゃん』付けでも嫌がらないAが、わざわざ厨房から食卓まで歩み寄ってきた。
「リムル様より、1週間の休暇を頂きました。連休は初めてなので、何をすれば良いかわかりません」
「なら、ちょうどいいッス。ベニマルさんが、伝えたい事があるらしいッスよ?」
隣に座るゴブタが話題を振ってきて、湯呑みを持ったまま焦る。スライムの姿になったリムル様を両腕で抱えて、着席したのを見計らい、とりあえず頭に浮かんだ言葉を口にした。
「……。休日は、いつも何をしてるんだ?」
「午前に、武器の手入れと剣術の稽古。午後からは、のんびり自室で過ごしたり、シオン達に女子会に呼ばれたら、できる限り参加していますね」
つらつらと淀みなく述べる彼女の言葉から、脳内で誘い方を模索して、長考するのをやめる。元々、深く物事を考えるのは嫌いだ。
「一日だけ、俺に時間をくれないか?」
「構いませんよ。いつにします?」
「……」
Aは、シュナの護衛が長かったため、具体的な計画を立てられない事を知らない。彼女から見れば『いつでも指示を出せる、頼れる若様』と映っているだろうが、俺はそんな立派じゃない。しかし、相手に決めさせるのも気が引ける。
「明日はリムル様が出立されるから、明後日でいいか? 詳細は、明日の昼に伝える」
「了解」
ゴブイチに呼ばれ、会釈して場を離れた直後、俺を囲む男達の笑みが深くなった。
朝になったが睡眠が浅く、頭がよく回らない。朝食と稽古を済ませて、しばらく自室に籠り、やがて、思念伝達で呼ばれた。
《若様。昼食が冷めますよ》
《ああ。すぐ行く》
断られるはずが無いのに、いざ対面すると、どんな反応を示されるのか。幾度も喉まで言葉が出かかっては止める事を繰り返し、怖くなる。
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竜胆(プロフ) - 200回の投票を頂き、ありがとうございます。 (2023年3月8日 19時) (レス) id: 2d2249a2d0 (このIDを非表示/違反報告)
竜胆(プロフ) - お気に入りに入れて下さる方が、再び400人に到達! ありがとうございます。更新できるように頑張ります。 (2020年2月2日 21時) (レス) id: ce36bc58b0 (このIDを非表示/違反報告)
竜胆(プロフ) - 瑠亜@影月さん» 瑠亜@影月さん、コメントと応援ありがとうございます。心変わりしてしまうほどとは(笑)もう話が一杯になったので、ただいま続編に向けて考案中です。更新できるよう頑張ります! (2019年5月13日 1時) (レス) id: ce36bc58b0 (このIDを非表示/違反報告)
瑠亜@影月 - 私はソウエイが推しキャラだったんですが、若様に心変わりしてしまいそうです(笑)これも竜胆さんの文才の力ですね!これからも更新頑張ってください! (2019年5月12日 21時) (レス) id: 9b9cc1c6b7 (このIDを非表示/違反報告)
竜胆(プロフ) - 紫癸さん» 紫癸さん、コメントと応援ありがとうございます。お褒めの言葉も重ねて感謝します。ただいまコミック版最新話の展開を待機している状態なので、もうしばらくお待ち下さい。必ず更新します。 (2019年4月11日 22時) (レス) id: ce36bc58b0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:竜胆 | 作成日時:2018年12月1日 1時