▼ ページ44
ーーー
ーーーーーー
土の匂いと雨の匂い。
それらによって朽ちていく鉄の生臭い臭気。
何も口にしていないのに、何も飲んでいないのに、未だ生きている自分が不思議でならなかった。蒼い鱗が、背中の肉と皮の塊が、酷く鋭くなった嗅覚が、衰弱もしない自分の身体が。
私はどうなったの。
私は「何に」なったの?
鏡一つ手に入らない現実で、自分が何か「非凡なモノ」になった事に怯え、そしてそれを支えにもしていた。何も出来ないのは怖い。何かが出来れば、何かになれば私はきっと幸せに成れるのだと、愛されるのだと!
震えながら空を見ていた。許される時を一秒、一秒と待ちながら、鉄格子が溶けて消える事を願っていた。
──変わらない世界に、一つの足音。
見たことも無い──くしゃくしゃな髪の青年が目を見開いて私を見ている。いつぶりの人だろう。私の存在に気付いている事は分かって居たけれど、彼がすぐに居なくなってしまわないように、必死に喉を震わせた。
掠れて声は音に成らず、座りっぱなしで痺れた足は、無様にぬかるみに沈んだけれど。
『君はどうして、こんな所に。
まさか、ずっとここに居たのかい』
彼は幽霊でも見たように震えた声で、指で、私の頬に格子越しで触れた。温かい。在り来たりな感覚が脳を刺して、息が止まる。
青年は驚愕し、戦慄し、困惑し、何故か怒り───それらすべてを理性か何かで押し殺して、静かに私の目を見て言った。
その声は涙に濡れていて、繕った優しい笑みは半分崩れて居たけれど。
『はじめまして。
生きていてくれて、よかった』
わたしに赦される時は来なくて
わたしはすでに幽霊で
だけど、ずっと大嫌いだった神様は、
そうなって始めて救いをくれたの。
420人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
みかこ(プロフ) - るとさん!読んでくれてありがとう(涙)やっちゃった……こう言うのは勢いだよね((ジェイコブさん良いよね!めっちゃええ人……(尊い)むらむら更新だと思うけどのんびり頑張るね(゜∇^d)本当にありがとう! (2018年12月19日 8時) (レス) id: 243d49e4e1 (このIDを非表示/違反報告)
木兎宮ると(プロフ) - おお!ついに公開したのだねっ!!(歓喜)ニュートも好きだけど、ジェイコブさんが本当に好き(尊い)ので沢山出しておくれ…(願望)無理せずに更新頑張ってd( ̄  ̄) (2018年12月18日 19時) (レス) id: 68f0c4b0f7 (このIDを非表示/違反報告)
みかこ(プロフ) - 衛さん» わああ衛さんまで駆け付けてくださって……感謝の言葉が見つかりません嬉しいです(つД`)ジェイコブさんも大好きなので絡ませて行きたい……ゆるっと頑張りたいと思っておりますので気力続く限りお付き合い頂ければ幸いです(涙) (2018年12月17日 0時) (レス) id: 243d49e4e1 (このIDを非表示/違反報告)
みかこ(プロフ) - アイカ@低浮上さん» イメログからありがとうございます!何だか絵だけじゃ物足りない気がし始めてしまって……あれよあれよと勢いで公開してしまいました汗お褒めの言葉までありがとうございます!精進します( ;∀;) (2018年12月17日 0時) (レス) id: 243d49e4e1 (このIDを非表示/違反報告)
みかこ(プロフ) - アバンギャルド・マボさん» マボ様に読んで頂けたなんて幸いです(涙)そして恐縮でございます汗応援ありがとうございます!自分なりに頑張ります( ´∀`) (2018年12月17日 0時) (レス) id: 243d49e4e1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:みかこ | 作成日時:2018年12月16日 20時