Ep.106 探偵としての私 ページ6
日本で造船される際に鈴木財閥が援助を行い、今も運行を管理している大型豪華客船「フォンシー・オブ・ザ・シー」は、つい先程汽笛を響かせて大海原へと旅立った。
今日からの五日間クルーズは、運行十周年を記念すると共に、鈴木財閥が新しく手に入れたビッグジュエルのお披露目と、そのために開催する一日目のディナーパーティーがメインのようだった。
「次郎吉おじさま〜!」
「おお、よく来たの!」
初めて会った鈴木次郎吉相談役は、今夜ディナーパーティーが行われるホールで私たちを出迎えた。荷物を置いてすぐそこへ向かったのは、夜のパーティーでお披露目する前に特別に宝石を見せてくれることになったからだ。
ホールは二階分が吹き抜けになった開放的な空間で、どうやら立食形式らしく背の高いテーブルやまだ何も乗っていないワゴン、昼前から忙しなく動き回るスタッフが散見していた。だがそれよりも目立ったのは、怪盗キッド対策に朝から配置されたという警備の警察官たちと、目を吊り上げて颯爽とこちらへ向かってくる中森警部の姿だった。
「おい! 夜まで部外者を入れるなと言っただろうが!」
「安心せい、警備システムの電源は切っておるわ!」
「そういう問題ではなくてだな……って、切ってどうする! 奴は既に船内へ潜り込んでいるかもしれないんだぞ!?」
……。
今になって、漫画の世界って感じだ。
ここ最近……なんならこの世界へ来てからずっと、私は私の問題で手一杯で、ストーリーとか事件とかに目を向ける余裕はなかったような気がする。
ただ、海の上という非日常的な環境がそう思わせるのだろうか。あるいは久々にこの世界のキャラクターに囲まれたせいなのか。それらが平和の上に成り立っているという安心感からか、その全てが少しずつ原因になっているのか。あまりにタイムラグのある一種の「楽しさ」を胸の内に覚えた。
……でも、
私は仕事をしに来た。
この平和の中に私はいない。
いられるはずもない。私は探偵ではなかったのだから。
ここにいるのは────……
「……ん? ……あんた、どちらさんだ?」
「噂のJK探偵二号よ!」
「はぁ?」
「知らないの? ま、この推理クイーン園子様に比べれば……」
ここにいて良いのは、あくまで「JK探偵」としての私だ。
腕時計を見た。
まだ、日が沈むまでは。
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ほろにがクラゲ(プロフ) - 莉久さん» わーありがとうございます❗無理なく書いてるものなので、無理なくお楽しみいただければ嬉しいです٩(*´∀`*)۶ キッド様のキザさ、出せているでしょうか…!?🙄(不安) (2022年8月29日 18時) (レス) id: 5ce108a39e (このIDを非表示/違反報告)
莉久 - こんにちは!なかなか時間が取れなくて、ちびちび読んでたんですけど、めっちゃくちゃ面白いです!素直に言って好きです。大好きです。コナンとも打ち解けて、……これからの展開が楽しみです!キッドがキザッ!好きッ!忙しいとは思いますが、更新頑張ってください! (2022年8月28日 16時) (レス) id: 28e45e7c9c (このIDを非表示/違反報告)
ほろにがクラゲ(プロフ) - サワーさん» わわっ、最初からずっと…!お付き合いありがとうございます!お飲みくださる方々に楽しんでいただければそれが何よりです、最後まで頑張ります!💪 (2022年8月26日 17時) (レス) id: 5ce108a39e (このIDを非表示/違反報告)
サワー(プロフ) - ずっと最初から読んでいた小説がついにクライマックス…!これまでずっと書き続けてくださってありがとうございます!これからもご自身のペースで無理せず書き続けて頂ければと思います!私も毎回楽しみにしています! (2022年8月25日 22時) (レス) @page45 id: fbf43580c0 (このIDを非表示/違反報告)
ほろにがクラゲ(プロフ) - 推しの財布さん» コメントありがとうございます!段々ややこしくなってきてしまったなと心配していたのでお褒めの言葉とっても嬉しいです…ε-(´∀`*)✨ (2022年7月24日 22時) (レス) @page31 id: 5ce108a39e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ほろにがクラゲ | 作成日時:2022年3月11日 12時