メタ推理が役に立たないJK探偵の本懐【名探偵コナン】

Ep.147 別れの言葉で ページ47

思わぬ収穫とは、今回の標的だった裏切り者に別の仲間がいたことだとベルモットは言った。

裏切り者の男はどうやらとある他組織との繋がりを深く持っていて、組織にとってその連中は前々から多少目障りな存在であったらしい。

組織は今回の件を利用して片をつけることにした。

裏切り者を処分するだけの仕事だったはずが、別件で扱いに困っていた目の上のたんこぶを排除することができたというわけだ。

「予定通りの仕事が予定以上の結果になった。ジンもラムも今頃ご機嫌よ」

「……ならよかった」

「それにしては嬉しくなさそうじゃない？」

「仕事だから」

「そう。まあいいわ、また後でね」

そう言い残して足音は遠のいた。

「……そっか」

無意識に呟く。

しばらくそこで立ち尽くした。

組織は裏切り者に対してどこまでも容赦をしない。

少しでも疑わしければ……あるいは疑わしいものと関連があれば、善人も悪人も構わず彼らの排除対象となる。

私が組織を裏切ればその周囲一帯は危険地帯と化すのだろう。

どこかで何かをひとつ間違えれば、次の瞬間には何もかもが吹き飛んでしまう。

私と共にこの船に乗っていた彼らもあるいは────なんて思考を払拭できないのは、ありえないことではないと思うから。

私が失敗したときにリスクを負うのは私だけじゃないということだ。

この身に迫ってようやく、同じように組織を裏切った灰原さんが危惧しているのはこういうことなのだと理解した。

なら……今の私にできる最善の選択とは、やはりそうなのだ。

余計な犠牲者を出さない方法。間違った道へ続かない扉。その上で、私自身の本懐を果たす可能性を残した選択肢。

私にとっての最善は────……。

不思議なほど潔く腹が決まった。

むしろスッキリしたような気がする。これでいい。どんな経緯で手に入れたものだろうと、その重みと天秤にかけるわけにはいかない。

それにきっと父さんは成功すると信じてた。それに足るだけの何かがあった。だからこそ私に手の内を見せたのだ。

大丈夫。

少し寂しいけど、それは別れの言葉で飲み込もう。


私は今日、この毒を飲む。

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