メタ推理が役に立たないJK探偵の本懐【名探偵コナン】

Ep.146 思わぬ収穫 ページ46

日が完全に昇っても雲に覆われた海の上はほんのり薄暗かった。

ぼんやりと水平線を眺める私の手には例のコンタクトケース。

船を降りる前にコナンと話をしなければ。FBIにかけあってくれれば万々歳。話が上手くいかなければ切り札、このAPTX4869を出す。

けど、不安もある。手を汚さなくてもいい場所で守られて生き延びて、私はちゃんと元の世界へ帰れる術を見つけられるのだろうか。

もし他に方法がなかったとしたら、その日々にどれほどの価値があるだろう。

それなら今すぐこの薬を飲んでしまった方が手っ取り早いのではないか。そんなことを考えた。

「……成功すれば家に帰れるわけだし……」

組織を裏切る行為の危険性を考えれば、これを飲んだって飲まなくたって生きるか死ぬかの賭けになるのは同じこと。

それなら「元の世界へ帰る」という目的を叶えられる可能性のある方がいい────……とは思いつつ、どうも踏ん切りがつかないでいた。

本当にそれが最善だろうか。それを選ぶことで後悔はないのだろうか。

それに、これは私以外の人間にとっても貴重な代物だ。

こうやって持て余しているよりはコナンや灰原さんに渡してしまった方が有意義なのかも……。

「わかんないなあ……」

頭をがしがしと掻き回し、一度思考を整理するために場所を変えようと踵を返す。すれ違った女性クルーがこちらを見た。

その視線に意味があるような気がして、次の瞬間私の足は止まった。

「順調なようね、お姫様」

「……ベルモット？」

「あら嬉しい。覚えていてくれたのね」

「一度話してあなたを忘れる人はいないと思う」

後ろからかけられる声に振り向かないまま応える。

声を聞いてすぐに分かった。けど、まさか彼女がこの船に乗っているだなんて。ただそれは、ボックが組織から信用されていないことを考えればおかしいことではなかった。

順調、というのはもちろん仕事のことだろう。けれどそれが言葉のままの意味ではないことはすぐに分かった。

「それにしたってずいぶん時間がかかっていたのね？ 待ちくたびれてつい手を出しちゃったわ……ボックが何か企んでいたようだから、そのせいだろうけど」

「あれはあなたの仕業だったの？」

「ええ。予定通り事が運んだことにしておいたから、心配しないで」

「……何のために」

「そんなことより、思わぬ収穫があったそうよ」

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