メタ推理が役に立たないJK探偵の本懐【名探偵コナン】

Ep.139 平和に似た時間 ページ39

四日目ともなるとプールも初日に比べれば人が少なかった。

もともと数千人規模のクルーズに数百人しか乗っていないとあって、どこへ行っても混雑で困るということはなかったが、朝イチで乗り込んだ時点では閑散としていると言ってもいいほど。

ただ、今度はコナンが姿を見せていなかった。

なにせ今日は怪盗キッドの予告日。彼も彼で気合が入っているのだろう。

クルーズ四日目の夜……今日の午後六時からは一日目同様パーティーが企画されている。たった数日の航海ではあるが、船側からの最後の挨拶の機会だ。

ただし宝石は警備システムで固められたパーティー会場に据え置きされているので、主催側からすればメインは怪盗キッドとの対決だろう。

今回は私も参加するつもりでいる。

後のことは船を降りれば否が応でも考えなければならないし、奴がまた何か仕掛けてくるなら受けて立つだけだ。あいつの個人的な都合なら私以外に手出しする気はないだろうし。

それならまだ少し、限りなく平和に似たこの時間を過ごしていたい。

そんな気持ちが無いとも言えなかったから。

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ディナーの準備のため、一度各々が部屋に戻った。事件があってから私は蘭と園子の部屋にお邪魔している。

「ねえ、キッド様パーティー中に現れてくれるかな？」

「来るんじゃない？ 八時に予告してるんだし……」

「でもディナーの時間になったら会場は招待客でいっぱいよ！」

「そうだねえ……。ね、Aちゃんはどう思う？」

「私？」

「だってなんだかコナンくんと気が合うみたいだし！ 同じ探偵としてどうかなーって」

「どうって言われても……」

話をしながらもそれぞれ自分の手荷物を漁り準備を進めていた。

「招待客かクルーに紛れて会場を暗転させて……手品みたいなトリックで人を誘導して、誰一人思いもよらないタイミングで……」

部屋に置きっぱなしにしていたカバンを開いて、中のものを取り出そうと手を伸ばした時、違和感に気が付いた。見慣れないものが入っている。

「……目的のものを掠め取る」

薄い茶封筒だった。

両面の外見と安全を確認してから封を破る。

「それが私の知る怪盗キッドかな」

「そう！ そうなのよ！ キッド様のあの鮮やかな手腕！ ああ、今回はどうやって宝石を盗むのかしら……！？」

「もー、園子ったら……。……ってAちゃん、どうかした？」

「ううん。別に何も」

私は封筒を元に戻して、カバンの奥底に追いやった。

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