Ep.133 逆戻り ページ33
さすがに異変を感じた彼が私を押しのけて部屋の中を覗き込むまで、私は
そうすることしかできなかった。私は彼らに比べれば普通の人間だから。
「……クソッ! A、中に入るなよ!」
声が上手く出ず、頷いて後ずさる。
「(────やりやがった)」
真っ先にその一言が脳裏に浮かんだ。
フツフツと湧き上がる苛立ちにも似たこの感情は怒りに違いなかった。
他の可能性なんて考えられない。
だって、そんなわけないじゃないか。
いったい他の誰がこんなことをする? よりによって私の部屋で、いくら殺人事件が横行するこの世界だからって、この状況下であの男を除いて他に誰が────。
「A!」
「ああ……コナン、くん……?」
そう呼ぶ必要もないのに、いつのまにか目の前にいたその子の名を率直に呼んでしまう。それでようやく自分が冷静でないことに気が付いた。
違う。
今はそこまで考えるべきじゃない。
咄嗟に息を吸い込む。
それから目を閉じ、深く、ゆるやかに、息を吐き出した。
……落ち着け。私なら、大丈夫。
「おい、しっかり────!」
「……あ、うん、もう平気。ごめん」
「え……そ、そうか?」
「それで状況は?」
「もう息がない……。それよりこの人、写真に写ってた男じゃ……」
「私もそう思う……格好も船の乗務員のものだし、クルーに扮して潜入してたって話とも合致する」
「最後に部屋を出たのって?」
「朝八時頃。それからずっと部屋には戻ってない」
「鍵は?」
「ここにある。オートロックだから閉め忘れはない。といっても清掃や万一のためのマスターキーをかっさらうくらい父さんならやるだろうし、そうなると防犯カメラの映像も期待できない」
「……とりあえず中森警部を呼ぼう。捜査二課は管轄外だけど、ひとまず応援の一課がこの船に来るまで……」
コナンはそこで一度言葉を止めた。
「……オメー、昨日言ってたよな……『必要になるのは鑑識と捜査一課』って」
ああ、そうだ。確かに私はそう言った。
「こうなることを読んでたんだな?」
まさか、決してそんなことはない。
けれど彼から見た私という人間の印象はもはや初めて出会った頃に逆戻り────いや、それよりもずっと悪い。
私はまた、容疑者というわけだ。
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ほろにがクラゲ(プロフ) - 莉久さん» わーありがとうございます❗無理なく書いてるものなので、無理なくお楽しみいただければ嬉しいです٩(*´∀`*)۶ キッド様のキザさ、出せているでしょうか…!?🙄(不安) (2022年8月29日 18時) (レス) id: 5ce108a39e (このIDを非表示/違反報告)
莉久 - こんにちは!なかなか時間が取れなくて、ちびちび読んでたんですけど、めっちゃくちゃ面白いです!素直に言って好きです。大好きです。コナンとも打ち解けて、……これからの展開が楽しみです!キッドがキザッ!好きッ!忙しいとは思いますが、更新頑張ってください! (2022年8月28日 16時) (レス) id: 28e45e7c9c (このIDを非表示/違反報告)
ほろにがクラゲ(プロフ) - サワーさん» わわっ、最初からずっと…!お付き合いありがとうございます!お飲みくださる方々に楽しんでいただければそれが何よりです、最後まで頑張ります!💪 (2022年8月26日 17時) (レス) id: 5ce108a39e (このIDを非表示/違反報告)
サワー(プロフ) - ずっと最初から読んでいた小説がついにクライマックス…!これまでずっと書き続けてくださってありがとうございます!これからもご自身のペースで無理せず書き続けて頂ければと思います!私も毎回楽しみにしています! (2022年8月25日 22時) (レス) @page45 id: fbf43580c0 (このIDを非表示/違反報告)
ほろにがクラゲ(プロフ) - 推しの財布さん» コメントありがとうございます!段々ややこしくなってきてしまったなと心配していたのでお褒めの言葉とっても嬉しいです…ε-(´∀`*)✨ (2022年7月24日 22時) (レス) @page31 id: 5ce108a39e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ほろにがクラゲ | 作成日時:2022年3月11日 12時