メタ推理が役に立たないJK探偵の本懐【名探偵コナン】

Ep.104 巻き込まれる ページ4

「え？ 鈴木財閥の五日間クルーズ？」

自宅で取った電話は例によって仕事の連絡だった。

組織からの指令は常に一方的で、厳密で、端的。不必要な情報は与えられない。それでいて全く知らない人間からの電話だったり、バーボンからの実に事務的なメールだったりするのだから、なんというか異世界に来た割にはつまらないものだ。

だが今回は違った。電話口の向こうには、どうやらウォッカがいるらしい。私としてはあの夜一度会ったきりで今までまったく存在を忘れていたから、声を聞いた瞬間に「どっかで聞いたことあるな」だなんて考えてしまった。

それより、聞き捨てならないセリフが聞こえたような。

思わず復唱すると、ウォッカのやや高圧的な声が返した。

『なんだ？ まさか、金持ちご自慢の宝石目当てに応募したんじゃねぇだろうな？』

「してない。けどたまたまそういう話を聞いた……というか、誘われたというか……」

『そんなら話が早ぇぜ。詳しい事は追って伝える。出航は来週の日曜だ』

次の瞬間、電話は切れた。

……なんだそりゃ。

園子たちと会ったのは偶然で、行くかどうかの返事をまだしていないのも偶然、そしてその船に関わる仕事が私に回ってきたのも偶然、あるいはそれだけが唯一必然だ。

そんな続くか、偶然って。

しかも豪華クルーズ？ 怪盗キッド？ それでいて組織絡み？ そんなの原作でもアニメでも劇場版でも見たことない。過去のゲームのシナリオにもないはずだ。

「メタ的に考えれば……いや、普通に考えても何も起きないわけがない……よな？ 待てよ、これ私……大丈夫？ 捕まらない？」

なんだ。一体なにが起きてるんだ……。

それともこれも「この世界じゃよくある」事件のひとつなのか？

何はともあれ確実なことはふたつ。

私は来週あの船に乗って、彼らの目を掻い潜りつつ"仕事"をすること。

そして、まかり間違って警察やその他執行機関に遅れを取ったり、私自身が組織から捨て駒として消費されるようなことがあれば、もはや元の世界に帰るどころではなくなるということ。

二つ目は以前からずっと分かっていた事ではあるのだが、今回の件で、どうやら私は他のキャラクターと同様に「巻き込まれる」系の宿命を課せられているらしいと悟った。

笑ってはいられないということだ。本筋を知っているからと言って。

「……仕方ない」

出席の連絡をするため、手に持っていたスマホでチャットアプリを開いた。

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