Ep.122 反骨精神みたいなもの ページ22
すっと息を吸い込んだ。
「───……なんかもうめちゃくちゃだ!」
「……はい?」
「この船に乗ってからとんでもないことばっかり……いやもう乗る前? 乗る前から!? もうなんか、もう……とにかくめちゃくちゃなんだよ!」
「と……とりあえず落ち着いて、A姉ちゃん……」
「この際言うけど私あんたが工藤新一だって知ってるからな!?」
「……え!? えっ、何、ちょっと待ってどういうこと!?」
「察してくれよ! だって分かるだろ! アンタの秘密を知ってるかって聞かれて一目散に逃げたんだぞ私は!」
「あ、いや、え? じ、じゃなくて……ボク、ただの小学生だよ? 新一兄ちゃんなわけないじゃない……」
堰を切ったように溢れ出す言葉を勢いのままに吐き出して、しどろもどろになる彼をなんとか視界に留めて、ようやくふっと息を吐いた。
くだらない。くだらない事をしていた今までの自分が、本当に情けない。
「……信じてほしい」
変わらないものを信じれば良かった。それだけで正解だったんだ。
「私はもう、組織側の人間じゃない」
「……」
「……ごめん、順を追って話すよ。まず最初に言っておかなくちゃならないのは、あの時話したファンタジーみたいな話、あれ全部ホントなんだ。冗談でも陽動でもないんだよ、本当に」
「あの時のって、"別の東京"がどうとかって話?」
「そう。まあ……信じてなんて無茶な話だとは分かってるつもりだけど、できればそれを踏まえて今から話すことを聞いてほしいんだ」
そう前置きをして、私は彼に事情を話した。
まず私が黒ずくめの組織に所属する形で日頃から探り屋の仕事をしていること。今回初めて殺しの仕事を承け、ボックはそれに伴って同じ船に乗り込んだ組織の人間であること。それが"別の東京"では数年前から行方知れずとなっていた私の父であるらしいこと。
そして私が命じられた殺しのターゲットは、父が元の世界へ帰るために組織からの足抜けをそそのかし利用した男であったこと。
私の目的はもともと元の世界へ帰ることだったが、ここに来て最優先事項がすり変わった。
それは、奴がやらかした自分勝手の後始末。
「それが仲間割れの理由か……」
「父さんは私も一緒に連れ帰りたかったみたいだけど正直まだ信用しきれないし、反骨精神みたいなもので断ってしまって……後悔はしてないけど」
「けど、このまま船が港に着けば組織は血眼で裏切り者であるその男を狙うハズだろ?」
私は頷いた。
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ほろにがクラゲ(プロフ) - 莉久さん» わーありがとうございます❗無理なく書いてるものなので、無理なくお楽しみいただければ嬉しいです٩(*´∀`*)۶ キッド様のキザさ、出せているでしょうか…!?🙄(不安) (2022年8月29日 18時) (レス) id: 5ce108a39e (このIDを非表示/違反報告)
莉久 - こんにちは!なかなか時間が取れなくて、ちびちび読んでたんですけど、めっちゃくちゃ面白いです!素直に言って好きです。大好きです。コナンとも打ち解けて、……これからの展開が楽しみです!キッドがキザッ!好きッ!忙しいとは思いますが、更新頑張ってください! (2022年8月28日 16時) (レス) id: 28e45e7c9c (このIDを非表示/違反報告)
ほろにがクラゲ(プロフ) - サワーさん» わわっ、最初からずっと…!お付き合いありがとうございます!お飲みくださる方々に楽しんでいただければそれが何よりです、最後まで頑張ります!💪 (2022年8月26日 17時) (レス) id: 5ce108a39e (このIDを非表示/違反報告)
サワー(プロフ) - ずっと最初から読んでいた小説がついにクライマックス…!これまでずっと書き続けてくださってありがとうございます!これからもご自身のペースで無理せず書き続けて頂ければと思います!私も毎回楽しみにしています! (2022年8月25日 22時) (レス) @page45 id: fbf43580c0 (このIDを非表示/違反報告)
ほろにがクラゲ(プロフ) - 推しの財布さん» コメントありがとうございます!段々ややこしくなってきてしまったなと心配していたのでお褒めの言葉とっても嬉しいです…ε-(´∀`*)✨ (2022年7月24日 22時) (レス) @page31 id: 5ce108a39e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ほろにがクラゲ | 作成日時:2022年3月11日 12時