Ep.121 身勝手な話 ページ21
探偵の仕事は純粋に好きだったのに。
どうして世界が変わってしまった程度のことでそれを諦めてしまったんだろう。
「(……これだけ組織と関わってしまった後じゃ、とても取り返しが……)」
私は私の思う探偵でいれば良かった。自分がどうしたいかを突き詰めるべきだったんだ。取り返しがつかなくなる前に────……。
────
組織と関わってしまったから?
……別にそうとは限らなくないか?
例えばこの江戸川コナン、彼は"組織と関わってしまったけど生きて立ち向かってる"筆頭の元高校生探偵だ。
飲まされた毒薬の副作用で幼児化した彼は、そのまま正体を隠して組織の影を追い続けている。結果的には不幸中の幸いである「組織から見れば消息が不明」という特性を活かす形で。
……ああ、過去の私は間違っていたけれど正しくもあった。
彼らとの関わりを持とうとしたのはきっとその正解のひとつだ。
今、私の傍には、この状況下において誰よりも頼れる名探偵がいるじゃないか。
「……抜けるか、組織……」
気付いた時には声に出していた。
「え……は、はあ!?」
「あー……うん、それがいい……それがいいよ」
「急に何を……ってA姉ちゃん! しっかりして! なんか目が虚ろだよ!?」
なんだかどうにも脱力してしまい、コナンに肩を揺すられる反動で赤べこのようにガクンガクンと頭を振る。マジで力が入らない。くだらなすぎて。自分が。
空回りして、迷走して、ここに戻ってくるのか。
「……遅くないかな」
それは独白のように、勝手に口から零れた。
「え……? なに?」
結局のところ一般人でしかなかった私は、既に悪事に加担しているのは否定できなくとも、悪の組織なんかにはそもそも向いていない。
人を殺せと脅されても殺せないタイプの一般人。それもただ罪悪感を恐れるあまりのことであると気付けただけでもひとつの収穫だろう。
だからやっぱりこの世界の「探偵」とは違う。
けれどそれ以外のどこかに居場所を探す必要なんてなかった。
だって、私にとっての探偵は一般人でいいんだから。
少し顔を上げると彼の瞳がそこにあった。
青い光。真実の光。
どうかあなたに答えてほしい。
私はまだ、そちらへ戻るには遅くないだろうか。
「聞いてくれる? この上ないくらい身勝手な話なんだけど────……」
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ほろにがクラゲ(プロフ) - 莉久さん» わーありがとうございます❗無理なく書いてるものなので、無理なくお楽しみいただければ嬉しいです٩(*´∀`*)۶ キッド様のキザさ、出せているでしょうか…!?🙄(不安) (2022年8月29日 18時) (レス) id: 5ce108a39e (このIDを非表示/違反報告)
莉久 - こんにちは!なかなか時間が取れなくて、ちびちび読んでたんですけど、めっちゃくちゃ面白いです!素直に言って好きです。大好きです。コナンとも打ち解けて、……これからの展開が楽しみです!キッドがキザッ!好きッ!忙しいとは思いますが、更新頑張ってください! (2022年8月28日 16時) (レス) id: 28e45e7c9c (このIDを非表示/違反報告)
ほろにがクラゲ(プロフ) - サワーさん» わわっ、最初からずっと…!お付き合いありがとうございます!お飲みくださる方々に楽しんでいただければそれが何よりです、最後まで頑張ります!💪 (2022年8月26日 17時) (レス) id: 5ce108a39e (このIDを非表示/違反報告)
サワー(プロフ) - ずっと最初から読んでいた小説がついにクライマックス…!これまでずっと書き続けてくださってありがとうございます!これからもご自身のペースで無理せず書き続けて頂ければと思います!私も毎回楽しみにしています! (2022年8月25日 22時) (レス) @page45 id: fbf43580c0 (このIDを非表示/違反報告)
ほろにがクラゲ(プロフ) - 推しの財布さん» コメントありがとうございます!段々ややこしくなってきてしまったなと心配していたのでお褒めの言葉とっても嬉しいです…ε-(´∀`*)✨ (2022年7月24日 22時) (レス) @page31 id: 5ce108a39e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ほろにがクラゲ | 作成日時:2022年3月11日 12時