メタ推理が役に立たないJK探偵の本懐【名探偵コナン】

Ep.103 複雑な心情 ページ3

「ホントありがとう！ いろいろ大事なものとか入ってたからさー！」

安堵の笑みでこちらを見る園子、それから蘭。

頭が痛くなる。私がひったくり犯から取り返したハンドバッグ、それはいったいなんの偶然か園子のものだったのだ。若い女を狙ったつもりが鈴木財閥のお嬢様の手荷物に目を付けるなんて運のいいひったくりだ。……運は悪いか。盗れてないし、モロに膝蹴ってやったし。逃げたけど。

「しっかしよく会うわねー。もうこれで三度目？」

「確かに。お互い連絡先も知らないのにね？」

ホントだよ。

前々から思ってたけどなんなんだこの遭遇率。この場合私が厄介事と分かって首を突っ込んだのがいけないのか？ でもひとこと言い訳したい、だって今眼鏡かけてなくて、ひったくられた人の顔なんて遠目じゃ全く分からなかったんだよ。

私の複雑な心情などなどいざ知らず、園子はうーんと唸った。

「まあ、何にせよ助かったわ！ なんかお礼できるものあったかなー……」

「いや別にお礼だなんて……」

「あっ、そうだ！ ねえ蘭、アレ(・・)、この子も誘っちゃおうよ！」

「アレって、さっきのアレ？」

「……アレ？」

「今度、うちのおじさまが船上パーティーという名の宝石お披露目会を企画してるんだけど、私たちみんなそれに招待されてるのよ。えーっと……あった！ コレコレ！」

「……超豪華クルーズ客船、世界最大級のカラーダイヤと五日間の旅……」

「一般参加の募集は終わってるんだけど、ま、うちら一般人じゃないから抽選はパスよ。ほら、そろそろどこの学校も夏休み入るじゃない？ それに……」

十字に折り目のついたフライヤー、園子はその一部、「カラーダイヤ」のテキストを指さす。

「なんと！ あの怪盗キッド様から予告状が届いてるのよ！ このダイヤを盗みに来るってね！」

「それでコナンくんたちも呼ばれたんだよね？ 小学校は今週から夏休みだし……」

豪華クルーズ。興味がないわけではないけれど、五日間も家を空けていいものだろうか。いつ仕事が入るか分からないのに。

「あいにくだけど、私は……」

「予定確認してからでいいから、連絡先交換しとこうよ！ はい、これ私のID！」

「……あ、うん……」

押しが、押しが強い。



────待てよ、私と連絡先交換するのはマズくない？

その上、そう気付いたのは家に帰ってからだった。でもまた偶然会うかもしれないし、勝手に連絡先消すっていうのもいかがなものか。

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