Ep.115 境界の鍵 ページ15
ふっと雰囲気が緩んだかと思うとそいつの声音は途端に雰囲気を変えた。
「なんというか……ここまでバレないとはさすがに思わなかったんだ。さすがに複雑だが……まあ、正直面白くもあっ────」
「もう投げるものないから直で蹴り行っていい?」
「うん、良くはないな」
記憶の鍵がカチリと音を立てて開く。見た目以上のアイデンティティを巧妙にひた隠していたその男は、ようやく記憶の中の人物像と重なった。
いるはずのないキャラクターで黒の組織の幹部、謎の男「ボック」は────私の父だ。
頭を抱え、ため息混じりに零した。
「……マジでなんなの? こんな超常現象に親子揃って……いや、とりあえず靴返せ。ああもう、何がどうなってるのか……」
「そうだな……話せばいろいろあったんだが……」
「とりあえず全部聞くよ。仕事の件もあるし」
その仕草、言葉選び、声色ひとつ、気配までもがさっきまでとは全くの別物に見えた。第三者の目から見た印象操作……自分ではない人間に成りすます技術は尾行の精度を上げるスキルだ。よく数年間もこの組織でやって来れたもんだとも思うが、私と同様"名探偵"を演じるよりは得意の分野だろう。
私は私で、喜べばいいのか、憤ればいいのか、いっそ楽しんだ方がいいのか……自分の感情の判断を付けかねていた。
「ああ、仕事。仕事な」
「そうだよ、仕事。どうすんの? こうなったらこの際言うけど私はすっぽかすつもりで来たよ。標的の顔も年齢も詳しいことはまだ何も聞いてないし」
「……そうか。それを聞いて安心したよ」
「っていうかあっちに帰る方法は……いや、まだここにいるってことは見付かってないのか……」
途中で気付いて落胆する。同じ世界から来た存在に僅かでも希望を抱いたのは単なる気の迷いと勘違いだ。そうに違いない。
しかし予想に反して父は驚くべき言葉を放った。
「いや、見付かったさ」
「えっ……ホント!?」
「ああ。米花シティホテルから始まる逃亡劇はその為にオレが仕組んだんだ。境界の
「……ん?」
父が何かをこちらへ投げて寄こした。慌てて空中で受け取り、箱のような感触を確かめる。手のひらを開く。
────透明なケースの中に数個、赤と白のカプセル剤があった。
「……これって」
父はこともなげに答えた。
「例の薬だよ。ある男に協力を持ちかけて盗み出してもらった。それは物語の鍵であり、世界間の境界の鍵だ」
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ほろにがクラゲ(プロフ) - 莉久さん» わーありがとうございます❗無理なく書いてるものなので、無理なくお楽しみいただければ嬉しいです٩(*´∀`*)۶ キッド様のキザさ、出せているでしょうか…!?🙄(不安) (2022年8月29日 18時) (レス) id: 5ce108a39e (このIDを非表示/違反報告)
莉久 - こんにちは!なかなか時間が取れなくて、ちびちび読んでたんですけど、めっちゃくちゃ面白いです!素直に言って好きです。大好きです。コナンとも打ち解けて、……これからの展開が楽しみです!キッドがキザッ!好きッ!忙しいとは思いますが、更新頑張ってください! (2022年8月28日 16時) (レス) id: 28e45e7c9c (このIDを非表示/違反報告)
ほろにがクラゲ(プロフ) - サワーさん» わわっ、最初からずっと…!お付き合いありがとうございます!お飲みくださる方々に楽しんでいただければそれが何よりです、最後まで頑張ります!💪 (2022年8月26日 17時) (レス) id: 5ce108a39e (このIDを非表示/違反報告)
サワー(プロフ) - ずっと最初から読んでいた小説がついにクライマックス…!これまでずっと書き続けてくださってありがとうございます!これからもご自身のペースで無理せず書き続けて頂ければと思います!私も毎回楽しみにしています! (2022年8月25日 22時) (レス) @page45 id: fbf43580c0 (このIDを非表示/違反報告)
ほろにがクラゲ(プロフ) - 推しの財布さん» コメントありがとうございます!段々ややこしくなってきてしまったなと心配していたのでお褒めの言葉とっても嬉しいです…ε-(´∀`*)✨ (2022年7月24日 22時) (レス) @page31 id: 5ce108a39e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ほろにがクラゲ | 作成日時:2022年3月11日 12時