Ep.113 マジックアワー ページ13
宝石のお披露目を兼ねたウェルカムパーティーは、華やかなクルーズの始まりを祝して一日目の夜に開催される。
昼間の様相からは一転、すっかりパーティーの会場と化したホールにはたくさんの乗客がごった返し、抽選で選ばれた一般客も招待されたどこかの会社の重役たちもみな同様に、ドレスコードに即した佇まいで同じ場所に集まっている。煌びやかな照明のもと、立食形式のディナーは予定通り執り行われた。
「すっげー! これ全部食べ放題だぜ!」
「すっごーい!」
「早速取りに行きましょう! 灰原さんも早く!」
「ええ……」
「コナンくんはー?」
「あとで行くよ。集合場所だけ忘れんなよ!」
「はーい!」
整然と並んだ料理のテーブルに向かって走っていく。
「私達も行こっか!」
「うん。ほら、コナンくんも」
「園子姉ちゃん、宝石のお披露目ってパーティーの後半でやるの?」
「さあ、詳しいことは聞いてないけど。何よアンタ、花より団子ならぬご馳走より宝石ってわけ? ガキのくせに生意気な……」
「(本来の意味とは真逆だな……)」
ふとコナンは立ち止まって周囲に目をやった。
元太、光彦、歩美、灰原。目の届く範囲に蘭と園子。一人足りない。
「……ねえ、Aお姉ちゃんは?」
「え? さっきまでいなかった?」
「ホントだ……どこ行ったんだろ。もう料理取りに行ったのかなあ」
「いやー、あの子の感じだと外へ散歩に出ててもおかしくないわね……こういう人混み苦手そうだし……」
「ボク探してくるよ!」
「あっちょっと、コナンくん!?」
言うが早いか、コナンは人混みに紛れて消えてしまった。
園子が呆れた溜め息をつく。
「ったくすばしっこいんだから……蘭、私達も会場内探してみる?」
「そうね、子供たちが戻ってくるまで……」
──────────
……ゴン……ゴン……。
足音は必要以上に低く、そして重く、木製の床板を震わす。
感じるのは昼よりずっと涼やかになった海風、日没後のマジックアワーが織り成す空のグラデーション。パーティーの賑やかな喧騒がさっきまでは微かに聞こえていたが、ここでは船がかき分ける波の音の方が大きかった。
落ち合う予定の場所へ歩を進める。
夕闇の薄暗さに沈んだ人影に向かって、私は声をかけた。
「……父さん」
その人物は振り返った。
黄昏時。それは輪郭も境界も曖昧になる時間帯。
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ほろにがクラゲ(プロフ) - 莉久さん» わーありがとうございます❗無理なく書いてるものなので、無理なくお楽しみいただければ嬉しいです٩(*´∀`*)۶ キッド様のキザさ、出せているでしょうか…!?🙄(不安) (2022年8月29日 18時) (レス) id: 5ce108a39e (このIDを非表示/違反報告)
莉久 - こんにちは!なかなか時間が取れなくて、ちびちび読んでたんですけど、めっちゃくちゃ面白いです!素直に言って好きです。大好きです。コナンとも打ち解けて、……これからの展開が楽しみです!キッドがキザッ!好きッ!忙しいとは思いますが、更新頑張ってください! (2022年8月28日 16時) (レス) id: 28e45e7c9c (このIDを非表示/違反報告)
ほろにがクラゲ(プロフ) - サワーさん» わわっ、最初からずっと…!お付き合いありがとうございます!お飲みくださる方々に楽しんでいただければそれが何よりです、最後まで頑張ります!💪 (2022年8月26日 17時) (レス) id: 5ce108a39e (このIDを非表示/違反報告)
サワー(プロフ) - ずっと最初から読んでいた小説がついにクライマックス…!これまでずっと書き続けてくださってありがとうございます!これからもご自身のペースで無理せず書き続けて頂ければと思います!私も毎回楽しみにしています! (2022年8月25日 22時) (レス) @page45 id: fbf43580c0 (このIDを非表示/違反報告)
ほろにがクラゲ(プロフ) - 推しの財布さん» コメントありがとうございます!段々ややこしくなってきてしまったなと心配していたのでお褒めの言葉とっても嬉しいです…ε-(´∀`*)✨ (2022年7月24日 22時) (レス) @page31 id: 5ce108a39e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ほろにがクラゲ | 作成日時:2022年3月11日 12時