桎梏ダイナミズム/ knsm ページ46
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踏み締めた落ち葉は紅葉よりも銀杏の方が多い様だった。足下に降り積もる秋を彷彿とさせる其れ等は夕陽を浴びて一様に黄金に光っていた。眩いそれを子供が見つけたのならば、衣服が汚れるのも御構い無しに地面に屈み込んで、指の間に葉を潜らせで弄んだだろう。俺は一度立ち止まって天を仰いだ。最初に見た時分にはさめざめとした秋晴れだったが、今は何とも言えない風合に色彩が融けて、思わず感嘆が溢れる様だった。
「ハァ。だいぶ来たな。」
俺は立ち止まったまま、ホォ、と息を吐いた。登り続けて一体どの位になるだろうか。そろそろ陽も傾き、世界が夜へと向かっている。夜目が効かなくなる前に一度、水分を補給しておくべきだろう。俺は此処まで背負って来た相棒から当初より随分と軽くなった水筒を取り出した。かちり、と蓋を開けて僅かになった水を飲み干した。さて、一泊する寝所でも探すとするか。そう決めて、シャリシャリと落葉を踏みしめながら山頂の方へと足を進める。整備された訳でもないのに誘う様にポッカリと拓けた道をズンズン歩いて行った。
「オオ、綺麗やなァ。」
暫く歩いていると鬱蒼としていた木々が急に晴れやかになった。左右から紅葉の枝が絢爛に垂れ下がり、様々な紅葉の様をこちらに魅せていた。紫に近い葉もあれば、まだまだ青い葉もある。薄黄に色づき始めた葉もある。まさに触れれば消える様な浮世離れした光景だ。見事な物だった。少しの間、口をあんぐりと開けて紅葉を見上げていたが、もうすぐ日没が迫って来ることを思い出す。
「ンー。どうしようかなぁ。」
昔から考え無しに行動することが多い俺は仲間達、強いては悪友からも無鉄砲だと揶揄われていた。今になってそれを理解する辺り、どうしようもない野郎なのだろうが、寝所が無ければ一晩中この山を徘徊することになってしまう。
「でもなァんも思いつかんし。」
ハァ、とらしくなく溜息を吐けば、ざわりと山風が吹き抜ける。紅葉の葉に優しく吹く風は何処か柔らかくて同時に寂寞を孕んでいた。紅葉の葉を数枚払って天へと一陣の風が吹き抜けた後にはまた静寂が支配するばかり。金粉を振り撒いた様な絶景が目の前に鎮座するだけであった。
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- 金 運: ★☆☆☆☆
- 恋愛運: ★★★☆☆
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鵯(ひよどり)(プロフ) - 栄養失調さん» みんな大好きやまとちゃんですが、噂(史実)によると沈没日が4月7日付近らしいのです。厳密には沖縄周辺にはでは散っておりますが、あくまで全国平均です。大和戦艦ミュージアムで桜の花をモチーフにしていたりしたのでつい。コメント誠に有難うございます。 (2019年10月14日 7時) (レス) id: 470ef09c6f (このIDを非表示/違反報告)
栄養失調 - 鵯さんの書く作品は本当に美しいですね。言葉一つ一つが繊細で……なんか、言葉にできないような、はい。頑張ってください!!!!(やけくそ) (2019年10月14日 1時) (レス) id: 3967b4b60c (このIDを非表示/違反報告)
栄養失調 - ちょっと待った(迫真)桜纏し大和戦艦……?さくら……さく……ら……?桜は散り際が……一番……(涙戦崩壊) (2019年10月14日 0時) (レス) id: 3967b4b60c (このIDを非表示/違反報告)
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