caffè e llatte / cino ページ45
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「Aさん。」
「ダメよ、これ以上は。」
寝台に押し倒されてしまった。油断していた私も悪いのだが、彼はもっと幼い子が好みだと思っていた。彼は私の両肩に沿う様にマットレスに腕を立て、私を吟味していた。彼の瞳は今にも泣きそうに見えて胸が苦しくなる。彼から仕掛けてきたにも関わらず、勿体振る辺り、策士なのだろう。
「お願いします。」
「ダメと言ったらダメなの。あなたと私はあくまでビジネスパートナー。弁えてちょうだい。」
彼は尚も瞳に涙をはる。鼈甲細工宛らの透き通った双眸がレンズの奥から此方を覗き見る。彼の瞳は弱々しく、庇護欲を掻き立てられる。だからといって利用されたり、絆されたりするのはどうにも癪だった。私は彼の頬に手を伸ばした。今までこうされることはあまり無かったのか、ふるり、と肩を震わせた。何をされるのか、と不安になったのだろうか。目を固く閉ざし、次に耐えていた。私は彼の仮面を剥がす様に、緩慢に眼鏡を抜き取る。彼は予期しない出来事にぱちぱち、と目を瞬かせた。思ったより、印象は変わるもので、彼が意外にも童顔であったことが分かった。
「A、さん?」
「なぁに。」
透き通った鼈甲飴色の瞳が内装の雰囲気に反射して、ぱちぱちと溶けてゆく。眼鏡をそのまま適当に放って彼の肩を支える。だが、彼は残念ながら眼鏡な気取られる事なく私を見つめ続けた。私は居たたまれなくなってそのまま彼に顔を近付ける。
「好きです。一緒になりたい。」
「無理よ。釣り合わないわ。」
口付ける刹那にふ、と彼が譫言のようにそう零した。私はそんな彼に絆される前にはにかんで見せ、そのまま彼と額を合わせた。その瞬間に彼はあろう事かぽろぽろと涙をこぼし始めたのだ。ぎょ、として思わず額を離し、ベッドから起き上がった。彼はそのまま子供のように泣き噦り始めた。
「なんで、なんで。」
「私が私で無くなるからよ。」
備え付けのインスタントコーヒー。市販のミルク。有り合わせで作ったそれはお世辞にも称賛はできない味だった。入れ過ぎたミルクがコーヒーの気高さを溶かして乳白に染め上げる。渦を巻いたカフェラッテはほんのりと緩くなって水っぽい味がした。
- 金 運: ★☆☆☆☆
- 恋愛運: ★★★☆☆
- 健康運: ★★★★★
- 全体運: ★★★☆☆
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鵯(ひよどり)(プロフ) - 栄養失調さん» みんな大好きやまとちゃんですが、噂(史実)によると沈没日が4月7日付近らしいのです。厳密には沖縄周辺にはでは散っておりますが、あくまで全国平均です。大和戦艦ミュージアムで桜の花をモチーフにしていたりしたのでつい。コメント誠に有難うございます。 (2019年10月14日 7時) (レス) id: 470ef09c6f (このIDを非表示/違反報告)
栄養失調 - 鵯さんの書く作品は本当に美しいですね。言葉一つ一つが繊細で……なんか、言葉にできないような、はい。頑張ってください!!!!(やけくそ) (2019年10月14日 1時) (レス) id: 3967b4b60c (このIDを非表示/違反報告)
栄養失調 - ちょっと待った(迫真)桜纏し大和戦艦……?さくら……さく……ら……?桜は散り際が……一番……(涙戦崩壊) (2019年10月14日 0時) (レス) id: 3967b4b60c (このIDを非表示/違反報告)
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