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朽ちたプログラム/ shorn ページ38

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「なぁ、何しとるん?」
「何、って。」

彼は此方を覗き見る様ににじり寄った。机上に展開していたのは星座早見表とピンの刺さった特殊な地球儀だ。また授業で使用している様な安い教材用の方位磁針ではなく、その道のプロ御用達のコンパス。彼はどれも始めて見るようで目を星の様に輝かせていた。彼はまたぱちぱちと瞬きして此方を窺った。

「だって此処、立ち入り禁止やん。」
「あ、えっと、そっちか。せんせーが特別に許可してくれたんだ。」

彼はそれだけ聞くと押し黙ってしまった。子供ながらに踏み込んではいけない領域があるのだと私の一言で理解してくれた様だ。もしくは彼も大概明るく振舞ってはいるが、家庭や付近に説明し難い複雑な人間関係があるのかもしれない。彼は申し訳なさそうに目を伏せると強く手元の日誌を握り締めた。まだまだ明るい陽射しが漆黒の表紙に落ちて飴色に艶々と輝いている。彼はそのやや年季の入り始めた日誌を私の方へと差し出した。受け取れ、ということなのだろうか。不思議に思い、首を傾げて日誌を手に取ると彼はそのままぐ、と突き付けた。

「せんせーに渡しといて。多分戻ってくるやろうから。」
「うん、分かった。」

無愛想なのに微塵も無礼と思わないのは彼の愛嬌もあるのだろう。私が了承の旨を伝えると彼は満足そうに笑った。本当に蜂蜜宛らの溶ける様な笑顔。その輝きは幾星霜の旅路の中で太陽が最も美しいと羨望するのに酷似していた。

「俺も星は好きやで。五年前までは。」
「__え。」

彼は悲しげにそう笑って此方に背を向けた。男子にしては珍しく肩口で切り揃えられた毛髪が贅沢にさらり、と揺れた。そのまま黄色の上履きをパタパタと鳴らして準備室から出て行ってしまった。後に残ったのは静寂のみ。手元の受け取った日誌だけがまだほんのりと彼の温度を宿している。

「シャオロンくん、日誌になんて書いたんだろ。」

ふと。逢魔時、魔が差した。彼の秘密を盗み見るかの様に緩慢に表紙を開いた。表紙の次にすぐに本日の日誌が見つかる。彼に似つかわしい達筆な字型で欄が埋められている。目が落ちてゆくのは最近のニュースという欄。其処の1行目に綴られていたのは

「銀河鉄道の夜」

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鵯(ひよどり)(プロフ) - 栄養失調さん» みんな大好きやまとちゃんですが、噂(史実)によると沈没日が4月7日付近らしいのです。厳密には沖縄周辺にはでは散っておりますが、あくまで全国平均です。大和戦艦ミュージアムで桜の花をモチーフにしていたりしたのでつい。コメント誠に有難うございます。 (2019年10月14日 7時) (レス) id: 470ef09c6f (このIDを非表示/違反報告)
栄養失調 - 鵯さんの書く作品は本当に美しいですね。言葉一つ一つが繊細で……なんか、言葉にできないような、はい。頑張ってください!!!!(やけくそ) (2019年10月14日 1時) (レス) id: 3967b4b60c (このIDを非表示/違反報告)
栄養失調 - ちょっと待った(迫真)桜纏し大和戦艦……?さくら……さく……ら……?桜は散り際が……一番……(涙戦崩壊) (2019年10月14日 0時) (レス) id: 3967b4b60c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:鵯(ひよどり) | 作者ホームページ:  
作成日時:2019年9月19日 22時

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