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Purple Head Hunt / shppi ページ35

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ばたん。肉を打ち付ける音が空間に響いた。その音に鈍く靄のかかっていた意識が一気に覚醒した。私の頬に床の温度が痛く感じられる。その音から数十秒後。どたどたと騒がしい音が遠くから聞こえてきた。その音はどうやら私の方へ向かっているらしい。私は床から立ち上がろうとしたが、両脚が残念ながら思うように動かなかった。

「Aさん、どうしましたか。」
「起き上がれないの。」

がちゃり、と乱雑に開け放たれたドアから彼が姿を現す。彼は酷く狼狽していたが、私の声を聞くと状況を把握したのか、床に無様に転がる私を軽々と抱き上げた。太腿に彼の腹が当たり、すぐに寝台の上に乗せられた。彼は頭から脚迄隈無く怪我を探す。私の視線もそれに釣られて自然と視線が自身の膝の方へと下がる。

「__え。」
「何かありました?」

あったのではない。無くなっていたのだ。膝を含めたその下から。私の両脚が無かった。先程立ち上がろうとして出来なかったのも、ベッドから起き上がろうとして落ちてしまった理由も理解出来た。彼はまるでそれが当たり前だと言うように解れた部屋着を元に戻した。

「あ、し、が。」
「あし?嗚呼、そんなことですか。」

彼はにやりと不気味に口角をあげた。ぞくり、と身体の芯に亀裂が入るような悍ましさだ。彼は紫色の双眸を艶美に輝かせながら、まるで情を孕んだかの様に私の太腿へと触れた。彼の男らしくも凹凸の少ない滑らかな指が太腿を跋扈する。

「脚が無くなったくらいでそんなに狼狽えないでください。大丈夫っすよ。脚が無くてもAさん、可愛いんで。」
「ぇ、ぁ。」

包帯やガーゼの巻かれている切り口に彼の指が触れる。麻酔でもしているのか痛みは無かった。彼は暫く太腿を堪能する様に撫で回していた。彼が不気味な笑顔で私の太腿を撫で回す度に恐怖がじわりじわりと胸中を侵食してゆく。またその手付きが酷く優しくて。まるで妊婦の胎を労わる様な優しい優しい手付き。彼は満足したのか太腿から指を離し、私を優しく抱き締めた。菖蒲の様な麝香が彼から漂って、否が応なく安心させられてしまう。そのまま背を赤児にするかの様に、ぽんぽんと撫でられてしまえば彼を拠り所に求めてしまうのは必然だった。

Purple Head Hunt / shppi→←渦巻き酔い散らす花々/ tntn


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  • 恋愛運: ★★★☆☆
  • 健康運: ★★★★★
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鵯(ひよどり)(プロフ) - 栄養失調さん» みんな大好きやまとちゃんですが、噂(史実)によると沈没日が4月7日付近らしいのです。厳密には沖縄周辺にはでは散っておりますが、あくまで全国平均です。大和戦艦ミュージアムで桜の花をモチーフにしていたりしたのでつい。コメント誠に有難うございます。 (2019年10月14日 7時) (レス) id: 470ef09c6f (このIDを非表示/違反報告)
栄養失調 - 鵯さんの書く作品は本当に美しいですね。言葉一つ一つが繊細で……なんか、言葉にできないような、はい。頑張ってください!!!!(やけくそ) (2019年10月14日 1時) (レス) id: 3967b4b60c (このIDを非表示/違反報告)
栄養失調 - ちょっと待った(迫真)桜纏し大和戦艦……?さくら……さく……ら……?桜は散り際が……一番……(涙戦崩壊) (2019年10月14日 0時) (レス) id: 3967b4b60c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:鵯(ひよどり) | 作者ホームページ:  
作成日時:2019年9月19日 22時

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