毛布の猛威/ snpisn ページ27
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彼の節くれだった指が私の後頭部に緩慢に滑ってゆく。慈しむような指通りは心地よくて、更なる快感を拾おうと彼に頭を擦り寄せた。彼はそんなはしたない私を咎めることなく、ただ私の髪に指を滑らせるばかり。彼に頭を預けているこの時間がどうしようもなく幸せで仕方がなかった。永遠に続かないと分かっていながら名残惜しく浅ましく彼を強請る姿は滑稽に違いない。
「……?どうしたん?」
唐突に甘え出した私に苦笑いが頭上から降ってくる。彼の逞しい胸板に頭をぐりぐりと押し付ければ、愛犬を受け入れる様に頭を両手で包まれてもふもふと撫でられた。温かくて心地の良い空間。あまりにも甘い温度に身を任せれば、彼は私に覆い被さる様に頭を抱き締めた。
「……しごと、いきたくない。」
「よしよし。辛いことがあったんやな。」
彼は何も言わずにそのまま私を強く抱き締めた。純白の掛布団が彼の肌と擦れる音が聞こえる。私は彼になされるがままに全てを彼に預けていた。彼がそうする事を許してくれるから。私は彼についつい甘えてしまうのだ。彼は優しい秋雨の様に私の耳にするり、と言葉を零してゆく。
「行きたくないなら行かんでもええよ。」
「だ、め、いか、なきゃ。」
嗚呼、ダメだ。本能がぐらり、と彼に傾く。彼は私を甘やかしてばかりいる。それが悪い事と言われるとどうか分からないが、彼は私にいつも甘い言葉を囁くのだ。心の奥底に蟠っている本心が彼の言葉に刺激されて私を絆してゆく。
「何で?別に行かんくてええよ。Aが辛い思いをするとこなんか。」
「大事な、ぷれぜん、が、」
ずるずると彼の腕の中に押し込められてゆく。温かくて大好きな匂いが鼻腔から滝の様に流れ込み、肺を満たして行く。そのまま私を赤児に孵すかの様に彼はブランケットを私の肩まですっぽりと包ませた。共用のダブルベッドだから彼の匂いが染み付いて、全てを彼に包まれている様な気分になる。彼はそのまま私を堕落させるかの様に強く抱き締めた。恐らく羊水に浸る胚はこんな気持ちなのだろう。何処までも穏やかで何処までも苛烈。視覚が、聴覚が、嗅覚が、触覚が全て綯交ぜになって曖昧に暈やけてゆく。ダメだ、ダメだと自分に言い聞かせて瞼を押し上げる。
- 金 運: ★☆☆☆☆
- 恋愛運: ★★★☆☆
- 健康運: ★★★★★
- 全体運: ★★★☆☆
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鵯(ひよどり)(プロフ) - 栄養失調さん» みんな大好きやまとちゃんですが、噂(史実)によると沈没日が4月7日付近らしいのです。厳密には沖縄周辺にはでは散っておりますが、あくまで全国平均です。大和戦艦ミュージアムで桜の花をモチーフにしていたりしたのでつい。コメント誠に有難うございます。 (2019年10月14日 7時) (レス) id: 470ef09c6f (このIDを非表示/違反報告)
栄養失調 - 鵯さんの書く作品は本当に美しいですね。言葉一つ一つが繊細で……なんか、言葉にできないような、はい。頑張ってください!!!!(やけくそ) (2019年10月14日 1時) (レス) id: 3967b4b60c (このIDを非表示/違反報告)
栄養失調 - ちょっと待った(迫真)桜纏し大和戦艦……?さくら……さく……ら……?桜は散り際が……一番……(涙戦崩壊) (2019年10月14日 0時) (レス) id: 3967b4b60c (このIDを非表示/違反報告)
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