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データに価値など無い/ tntn ページ3

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それにしてもほんまに車もおらんなぁ。

いつもなら左右から車がひっきりなしに往来する道路も何故か一台もいなかった。橙のガードレールが目を焼いていたが、ガードレールの中は夏に満ちている。一応の安全確認をして道路を横切った。アスファルトから立ち上る熱気が陽炎を生み出す。じりじりと遠くに見える田園風景を歪ませて焦がしていた。

まるで、熱さが見せた夢みたいや。

きっと夏の暑さにやられていたのだろう。からん、と瓶同士が擦れ合う音が耳の奥に厭に響いた。何処までも何処までも広い夏の空には見上げるばかりの大きな入道雲が聳え立っている。数刻したら夕立が来るかもしれない。外に干している洗濯物は取り込んだ方がいいだろう。

「なぁ、A。そう思うやろ?」

じりじりと灼熱が跋扈する世界にゆらり、と陽炎が揺らめいた。それは緩慢に人の形を象ってゆく。白無地のミニドレスがふわり、と広がってまさに天使の様だった。フリルがふんだんにあしらわれた日傘がじくじくと目を焼いてゆく。判っている。これは夢だ。誰かが創り、俺が望んだ御伽噺。数メートル先にいる彼女の表情は分からなかった。

「トンちゃん、西瓜冷やして待ってるね。ふふ、楽しみだなぁ。」

妙に耳にその言葉が焼き付いて離れなかった。随分と聞いていなかった懐かしい声が鼓膜を溶かし、脳髄を熱で溶かしてゆく。呼吸が荒い。妙に響く。全身から汗が噴き出して止まらない。くるり、と此方を振り返った彼女がにやり、と歪に弧を描いた。違う。これは彼女ではない。彼女の姿を借りた別の何かだ。その何かが俺に対する彼女の怨念なのか、俺が彼女に媚び諂う恋情なのかは分からなかった。彼女が奇妙な滑らかさを持って無機物的にゆっくりと倒れてゆく。まるで蜘蛛の糸に操られているかの様に。倒錯してしまいそうな程に俺は彼女に恋い焦がれていた。

「残念だったね、『トントン』。」

彼女の腹からびちびちと赤が飛び散る。まるで種を破裂させるかの様な気味悪いそれ。は、と息を飲んだ瞬間に胃酸がぐじゅぐじゅと沸騰して込み上げる。嘔吐感が収まって時間を確認する為に携帯を開けばメッセージアプリが起動したまま。日付は今日だ、一年前の。

桜纏し大和戦艦/ grppn→←データに価値など無い/ tntn


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鵯(ひよどり)(プロフ) - 栄養失調さん» みんな大好きやまとちゃんですが、噂(史実)によると沈没日が4月7日付近らしいのです。厳密には沖縄周辺にはでは散っておりますが、あくまで全国平均です。大和戦艦ミュージアムで桜の花をモチーフにしていたりしたのでつい。コメント誠に有難うございます。 (2019年10月14日 7時) (レス) id: 470ef09c6f (このIDを非表示/違反報告)
栄養失調 - 鵯さんの書く作品は本当に美しいですね。言葉一つ一つが繊細で……なんか、言葉にできないような、はい。頑張ってください!!!!(やけくそ) (2019年10月14日 1時) (レス) id: 3967b4b60c (このIDを非表示/違反報告)
栄養失調 - ちょっと待った(迫真)桜纏し大和戦艦……?さくら……さく……ら……?桜は散り際が……一番……(涙戦崩壊) (2019年10月14日 0時) (レス) id: 3967b4b60c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:鵯(ひよどり) | 作者ホームページ:  
作成日時:2019年9月19日 22時

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